「このままではダメ」 長谷川唯が考える世界との差…なでしこジャパンに足りない「個人としての戦術理解」

なでしこジャパンMF長谷川唯が女子アジア杯を振り返った【写真:Getty Images】
なでしこジャパンMF長谷川唯が女子アジア杯を振り返った【写真:Getty Images】

【インタビュー】敗れた中国戦「『勝てたな』というのが、の終わってからの感想」

 なでしこジャパン(日本女子代表)は、女子ワールドカップ(W杯)予選を兼ねた女子アジアカップをベスト4で終えた。来年、オーストラリアとニュージーランドで共同開催される女子W杯の出場権を獲得した一方、期待された大会3連覇は達成できなかった。

 池田太新監督が就任して、対外試合を行えないなかで迎えた最初の大会で、イングランドのウェストハム・ユナイテッドに所属するMF長谷川唯は4試合に先発出場し、日本の攻撃を牽引する活躍を見せた。

 準決勝敗退後、すぐにイングランドに戻った長谷川は、この大会を通じてどのような感触を得たのか。後編では、PK戦の末に敗れた準決勝の中国戦(2-2/PK3-4)を振り返るとともに、来年のW杯へ向けたなでしこジャパンの課題や意気込みを聞いた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部/全2回の2回目)

   ◇   ◇   ◇

――無事に女子W杯の出場権を獲得して、中国との準決勝を迎えました。PK戦に行くまでに2回リードを奪いながらも、追い付かれてPK戦で敗れています。この試合は、どういう印象が残っていますか?

「言い訳にはなってしまうのですが、本当に『勝てたな』というのが、終わってからの一番の感想ですし、今でも、そう思います。でも、中国の強いところ、ワンチャンスで決め切る力、負けている時のメンタルは、やっぱり見習うべきというか、絶対に自分たちにも必要なものです。ヨーロッパの相手との試合では、ボールをなかなか持てない時間を経験してきましたが、この先の戦いでは先制される試合も出てくると思います。その時に、ああやって最後まで食らい付くことを、諦めずに追い付くことを、自分たちがやる試合も出てくると思います。そこも1つ勉強になりました。勝たなければいけない試合だったのはもちろんですが、負けたことを次に生かせるように考えています」

――中国戦でリードが守れなかったのは、やられた守備、ボールの保持の仕方、逃げ切るための意思統一、最も課題だと感じるのはどこでしょうか?

「まず1-0で勝っている状況のなかでは、後半の立ち上がりのところで失点しました。失点してはいけない時間帯でしたが、そこでは『攻めて2点目を狙いにいくなかでも失点はゼロに抑える』という考えは、全員の意思統一ができていたと思います。そのうえでのプレーのところで、失点をしてしまったと思います。

 延長戦で2点目を決めてからは、監督が選手交代で守備の選手を入れていたので、全体として、どういうプランで行くかは、はっきりしていたと思います。それでも上手く抑えられなかった。私がクリアしようとしたところで、しっかりクリアできていればという思いもあるのですが、それ以外の部分でも、中に人数が多いなかで点を決められてしまいました。

 リードをした時の日本のプランとして、どれが正解なのかは、今も分かっていません。これがヨーロッパのチームであったら、もっとパワーのある選手が入ってきますし、最後の時間帯で守り切れるのかも含めて、考えなければいけません。それでも、ボールを保持して、しっかり回しながら、ハーフラインより前でボールを保持できる時間を作れば、事故みたいな失点もなくなると思います。ただ、ボールを保持しようとするのか、引いて守り切ろうとするのか、どちらがいいかは、チームとしてしっかり話し合わないといけない部分だと思います」

――そこは話し合って決めることだけで解決するものなのでしょうか。それとも、実戦で確かめて、成功体験を重ねないといけないものでしょうか。

「ああいう場面は、なかなか実戦では起きにくいのですが、今回、それが起きて、どうするかの意思統一ができていたなかで失点してしまいました。このやり方でDFの人は厳しくないのか、次にこういう試合展開になった時は、最後のギリギリの時間帯までボールを動かそうとしてみるのか。そこを感じ取るために実戦も必要だと思います。日本人の体格、プレースタイルを考えると、ボールを持つのがいいのかなと感じるので、そこはまた次に生かしたいと思います」

――なでしこジャパンは、ボールを保持できるところを強みとしてきましたしね。

「はい。あの試合に関しては、まだそこまでパワープレーに来られていなかったなという印象が、自分自身にもありました。もっと前に力をかけてこられる状況になったら、みんなで守ることも仕方がない部分はあると思うのですが、もう少し落ち着いてボールを回すこともできたのかなと思います」

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