41歳最年長Jリーグデビュー→格闘家に異色の転身 クラファン、年俸10円、イップス…「職業:挑戦者」が歩んだ波乱万丈キャリア

Y.S.C.C.横浜時代の安彦考真【写真:本人提供】
Y.S.C.C.横浜時代の安彦考真【写真:本人提供】

【元プロサッカー選手の転身録】安彦考真(元水戸ほか)前編:高校生で単身ブラジルに留学

 世界屈指の人気スポーツであるサッカーでプロまでたどり着く人間はほんのひと握り。その弱肉強食の世界で誰もが羨む成功を手にする者もいれば、早々とスパイクを脱ぐ者もいる。サッカーに人生を懸けて戦い続けた彼らは引退後に何を思うのか。「FOOTBALL ZONE」では元プロサッカー選手たちに焦点を当て、その後の人生を追った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小田智史)

 今回の「転身録」は、世界初の「クラウドファンディングJリーガー」「年俸10円Jリーガー」として注目を集めた安彦考真(44歳)だ。水戸ホーリーホックの練習生を経てプロ契約を結び40歳にしてJリーガーとなり、41歳でJリーガー最年長デビュー記録を更新するなど、Jリーグで3年間プレー。2020年シーズン限りで現役生活に別れを告げると、格闘家へ転身し、22年2月16日にはプロデビューの一戦を控える。「職業:挑戦者」。挫折、批判に負けることなく、Jリーグまでたどり着いた波乱万丈のサッカーキャリアを振り返る。

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 安彦がサッカーを始めたのは幼稚園の頃。父親が野球好きで、自身もよくキャッチボールをしていたなか、団地で仲の良かった友人たちがサッカーをしていたのがきっかけで、のめり込んでいった。

 サイドバック(SB)を務めていた若き日の自分は、「サッカーは好きだけど、上手くはなかった」と安彦は振り返る。最初の転機となったのは、高校への進路を考えていた時だった。

「中学校では部長をやっていて、自分の学年ではスタメンだけど、選抜には入れないレベルでした。行きたいなと思った高校のセレクションを受けたら合格したんですけど、偏差値が足りないから駄目だということが分かって(苦笑)。泣く泣く地元の高校に行くなら、1回留学したいなと思って、中学3年生の時に自分で資料を取り寄せて、書類を書いて、1次審査は通ったんです。2次審査は静岡で面談だったのでそれを親に伝えたら、『何言ってるの? 高校くらいちゃんと行きなさい!』と、書類をビリっと破り捨てられました(苦笑)。結局、地元の偏差値の合う高校に行かざるを得ない形になりました」

 進学した新磯高のサッカー部は「みんな練習もしない」状態で、道を踏み外しかけた瞬間もあった。しかし、高校2年生の夏、ある部員がブラジルに短期留学したのを知り、再び海外への熱が高まる。「ちゃんと勉強もしないし、自分のことができないような子がブラジルに行けるわけがない!」。母親にそう諭され、安彦は渡航費を稼ぐべく新聞配達を開始。半年間のバイト生活で30万円を貯め、高校3年生の夏に単身ブラジルへ渡ることになる。

 ミナスジェライス州のベロオリゾンテにあるミナスFCでは、当初1か月の短期留学のはずだった。しかし、同じSBの選手が怪我をしたことで監督から「残れないか」と尋ねられ、親に相談することなく滞在を決断。3か月後、卒業するための単位を取得すべく、無念の帰国となった。

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