ベスト4敗退の高川学園、エースから1年生FWに渡された“バトン”【高校サッカー秘話】

高川学園の1年生FW山本吟侍【写真:小林 靖】
高川学園の1年生FW山本吟侍【写真:小林 靖】

青森山田に0-6で完敗も、1年生FW山本は3年FW中山の思いを胸に途中出場

 1年生が大舞台を経験した。1月8日に行われた高校サッカー選手権準決勝・青森山田(青森)対高川学園(山口)の一戦は、青森山田の攻撃陣が爆発して6-0と快勝した。しかし、今大会を通じて高川学園が見せた“トルメンタ旋風”と、選手たちが得た経験はとてつもなく大きなものだった。

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 高川学園のエースストライカーは、180センチの屈強なFW中山桂吾(3年)だが、その座をこの1年間狙い続けていたのが、FW山本吟侍(1年)だ。高川学園中時代は10番をつけ、エースストライカーとして君臨した彼は、177センチのサイズと一瞬のスピードで相手を引き離していく動きが秀逸だ。

「僕は中山さんを尊敬しています。中山さんは筋トレもしっかりとしていて、フィジカル面でどっしりしているので、前線でボールを収めたり、周りを使ったりできる。僕はまだ線が細いので、もっとフィジカルをつけて中山さんのようなストライカーになりたいです」

 大会前、山本はこう語っていた。3年生に憧れて1年生が努力する――。この恵まれた環境で山本は力を磨いたことで、選手権メンバーにも入ることができた。

 1回戦の星稜(石川)戦ではエース中山が2ゴールを挙げる活躍をベンチで見つめ、アディショナルタイムにピッチに送り出された。2回戦の岡山学芸館(岡山)戦ではついにスタメン出場を果たし、中山と2トップを組んだ。前半のみの出場だったが、彼にとっては目標としていたことだっただけに、貴重な40分となった。

 3回戦、準々決勝は出番が訪れなかったが、14大会ぶりの準決勝でその時は訪れた。0-4で迎えた後半29分、交代を告げる掲示板に記されたのは「9」の数字。中山との交代だった。スコア的にこれが高校最後の試合となる中山が下がり、来年以降エースとして期待される山本が入る。この瞬間、エースストライカーのバトンは中山から山本に渡された。

 ほぼ試合が決してしまっていた状態だったが、山本は中山の思いを胸に貪欲にゴールを狙い続けた。放った1本のシュートはDFに当たってしまったが、彼が経験した16分間は高川学園の未来につながる時間だった。

「大会が始まってからチームの思いが1つになって毎試合この1年間できなかったこともできるようになって、成長をすごく感じました。ベスト4という結果が出て良かったです。後輩たちは今日の青森山田の強度を忘れないで、経験者を中心に戦ってほしいなと思います」

 試合後、負傷のDF奥野奨太(3年)に代わってキャプテンマークを巻いたMF北健志郎(3年)が語ったように、先輩たちが作り出してきた最高の経験と思いを後輩である山本たちがしっかりと引き継がないといけない。そのことは山本自身が一番理解しているだろう。憧れる存在から憧れられる存在へ。山本の自覚に満ちた1年が始まる。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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