「俺、もう引退する」 元日本代表MF水野晃樹、一度は諦めかけた現役続行――社会人移籍へ傾けた妻の「まだ見たい」の言葉

「できるなら、やったらいいじゃん」…妻から伝えられた思い

『俺、もう引退する』って妻に話をしたんです。そうしたら『サッカーできるんだったら、やったらいいじゃん』って言葉が返ってきて。去年、公式戦で1試合も出られなかったんですよ。ってことは、家族は僕がサッカーをしている姿を見ていないわけです。それでも妻は『サッカーしている姿をまだ見たい』って言ってくれたんです。

 正直、自分としては家族を守らないといけないっていう宿命もありますし、すごく悩んだんですよね。でも結果的に妻の言葉で『じゃあ、もうちょっとやらせてもらおう』と思い、そこが続けるきっかけにはなったんです。

 いざ、社会人リーグのクラブに入ってみて、やっぱり環境には衝撃を受けました。フットサルコートで練習が夜の8時、9時から、薄暗い中でやっていて。今まで厳しいトレーニングを積んでいたなかで、どうしても緩さを感じてしまい、ちょっと不安な部分は正直ありました。

 でもチームの中に、永井選手(元浦和レッズなど)、永里選手(元湘南ベルマーレなど)という元プロ選手の2人がいたので、彼らと一緒にプレーすることによってある程度話が通じる部分があったので、そこで一安心できたのはありましたね。

 これまで当たり前だった感覚というと例えば、プロの環境でやっていれば1つ言えば理解できていたことに対して、7,8個話を丁寧に作っていって話してあげないと理解してもらえないんですよね。そこの差はすごく感じました。

 二人から『話が通じないから大変だよ』というのは聞いていたんです。でも、常にコミュニケーションをとっていくうちに理解してくれるようになったんですよね。最初7,8個丁寧に話していた部分が、5,6個になったり、今だったら3,4個話せば通じるようになったり段々変わってきて。

 技術的なところで劣る部分もありますけど、彼らは僕より動けるし、アグレッシブにプレーできるので、そこにサッカー脳を植え付ける、どういうものなのかを理解させて、プレーさせていくことによって、すごく伸びしろを感じるんです。以前の自分だったら単純にプレーするだけだったんですけど、経験や技術を伝えることによって『こんだけ選手って成長するんだ』っていう楽しさも今は感じています」

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