「日本のやり方も悪くない」 ドイツ人コーチが語る選手育成システム、大学進学の利点は「チャンスを探れる」

U-17ドイツ代表【写真:Getty Images】
U-17ドイツ代表【写真:Getty Images】

【ドイツ発インタビュー#3】マインツ・セカンドチームコーチのペッシュ氏を直撃

 良くも悪くもマネーゲーム化する現代プロサッカー界において、それぞれのクラブがどのように自軍の選手層を厚くするかは、まさに命題だろう。自前で選手を育成し、トップチームへつなげるビジョンはどこのクラブも一度は考えるはずだが、実際にそうしたサイクルを上手く機能させているクラブは多くない。

 ドイツ国内ではセカンドチームを持つことはすでに義務ではない。例えばレバークーゼンやライプツィヒをはじめ、セカンドチームを廃止するクラブが増えてきている。U-17やU-19選手で確かな将来性が期待される選手にはそれなりのお金を払い、それ以外の選手へさらに投資をするよりも、割り切って移籍による選手補強に動いたほうがいいという考え方もある。

 ではセカンドチームを持つこと自体に意味がないのかというと、そういうことではない。「なぜセカンドチームが必要で、どのような役割を持ち、どのような関わり合いをするべきか」が明確になっているクラブでは、U-17、U-19からセカンドチーム経由でトップチームデビューを飾る選手がどんどん出てくるのだ。

 ブンデスリーガクラブであるマインツのセカンドチームでコーチを務めるシモン・ペッシュ氏が、セカンドチームの意義について語ってくれた。(取材・文=中野吉之伴/全3回の3回目)

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「セカンドチームはU-23チームとして存在しているけど、いわゆる橋渡しが役割だ。クラブにとって、とても重要だ。U-19を終えた選手は、そのまま直接大人のサッカーに対応し切れないところもまだまだある。そこには大きな差があるんだ。インテンシティー、プロフェッショナルさ。すでに学生ではないので、すべてサッカーに集中して取り組むことが求められる。そしてプレーパフォーマンスはさらなる向上が必要になる。U-19ブンデスリーガと成人4部リーグとでは4部リーグのほうがレベルはずっと高いという現実を見なければならない。U-19時代なら40~50分集中していたらなんとかなっていたことが、4部リーグでは90分間集中してなければダメなんだ。

 それがセカンドチームがある大きな意味だと思う。育成から上がってきた選手がよりインテンシティーが高く、より精度が高く、より連続した集中が求められる環境でプレーできるようにする。サッカーの内容よりもメンタルのほうだね」(ペッシュ氏)

 U-19ブンデスリーガでプレーできたらプロまであと少し、なんてことはないのだ。でもその事実に気がつかない選手や親は実に多い。それには「呼称も問題があるのではないか」とペッシュ氏は指摘する。

「その名前から選手は自動的に『僕らはドイツのトップレベルでプレーしている』と勘違いをしてしまう。でも正直U-17、U-19ブンデスリーガに所属しているチームがみんなトップレベルのチームというわけではないんだ。それこそ選手によってはU-19ブンデスリーガでプレーをしていることがプラスにならないことも多く出てくる。U-19ブンデスリーガでバイエルンにマインツが2-0で勝ったとする。それはもちろん素晴らしいことだけど、あくまでもU-19という枠の中の話でしかない。(ポーランド代表/バイエルン・ミュンヘンFWロベルト・)レバンドフスキがいるチーム相手に勝ったわけではない。

 うちのU-19選手の何人かは、時々U-23で練習に参加することがあるけど、みんな『インテンシティーが全然違う!』ということを口にしている。だからそうした環境から上がってきた選手に『大人のサッカーに求められることは何か』『そのために何を意識して取り組まなければならないか』を伝えることが僕らの役割だと思っている」

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中野吉之伴

1977年生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。最近はオフシーズンを利用して、日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。

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