日本代表の「箱」問題、肝心なのは“中身” まずは現状の選手がベストか問われるべきだ

オマーンに勝利し2位に浮上した日本代表【写真:Getty Images】
オマーンに勝利し2位に浮上した日本代表【写真:Getty Images】

【識者コラム】日本代表は今回箱も変えてみたが、たぶんこれまでと結果は同じだろう

 サッカーにはフォーメーションがある。4-3-3とか3-5-2といった選手の並べ方だ。機能性も含めてシステムとも呼ぶ。

 システム自体に良い悪いはなくて、選手を収納するための「箱」のようなものだ。あくまでもシステムは選手を活かすためにある。ただ、いったん収めてしまうと箱の機能性が問題になる。ちゃんと入れたはずの中身が漏れてしまう、隙間がありすぎて中で中身がガタガタする、逆にぎゅうぎゅうだ、そもそも運びにくい……というわけで、システム自体が批判され、議論の対象にもなるわけだ。

 ワールドカップ(W杯)アジア最終予選を戦う日本代表はオーストラリア戦から4-3-3にシステムを変えて3連勝した。変更はそれまでの4-2-3-1からの微修正にすぎないが、このシステム変更には意味があった。森保一監督はオーストラリア戦で田中碧を初めて先発起用し、川崎フロンターレ時代のチームメイトだった守田英正と組ませた。すでに不可欠の存在になっている遠藤航と、田中&守田、3人のMFを収めるために「箱」を変えている。

 ただし、3試合で4-3-3システムが存分に機能しているわけではなく、この先改善されそうな気配もない。森保監督下のチームは何回か軸になる選手を変えて組み直していて、その都度最初はいいのだけれども、試合を重ねるごとに鈍化していく傾向がある。停滞するから変えるわけだが、変えてもやがて停滞するのだ。今回は初めて箱のほうも変えてみたが、たぶんこれまでと結果は同じだろう。

 これは監督が悪いというより、代表チームなので仕方ないのだ。

 クラブチームと違って練習時間が非常に限られている。システムはその長所を伸ばし、短所を克服することで機能性は上がり改善されるのだが、代表チームにそんな時間は与えられていない。4-3-3もぶっつけ本番に近く、試合の中で改善してほかやりようはない。多くの代表チームも同じような状況である。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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