主力2人を失った川崎、“ベスト模索”で黄金期の鹿島を彷彿 次世代に繋がる再スパート

リーグ戦首位で終盤戦を迎える川崎フロンターレ【写真:Getty Images】
リーグ戦首位で終盤戦を迎える川崎フロンターレ【写真:Getty Images】

田中碧と三笘薫が夏に欧州へ移籍、連勝街道を突き進む川崎に異変

 選手輸出国の日本にとって、国内リーグは実質2シーズン制の様相を呈す。

 まさに今シーズンの川崎フロンターレが、その典型だった。前半戦はほぼフル出場してチームを牽引して来た田中碧(ドイツ2部デュッセルドルフ)と攻撃の切り札的な存在だった三笘薫(ベルギー1部ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ)が、揃って夏に欧州へ移籍した。2人がフル稼働していた時期の川崎は記録破りの強さを見せて「毎試合3ゴールを挙げて相手を圧倒しよう」という指揮官の目論見通りに連勝街道を突き進んだ。

 だが主力2人が去って流れは一変した。面白いように演出して来たチャンスの数が減り、逆に対戦相手には勇気と自信を与えた。気がつけば横浜F・マリノスが勝ち点1差に迫り、逆転が目前のレース展開にも見えた。

 しかし、ここから川崎は、まるで黄金期の鹿島アントラーズを彷彿とさせるような勝負強さを見せる。9月22日の鹿島戦からは3試合連続して先制を許した。ところがこの鹿島戦では、後半アディショナルタイム4分に宮城天のスーパーゴールで逆転勝ち。続く湘南ベルマーレ戦でも、知念慶の決勝点が生まれたのは同じく後半アディショナルタイム4分。さらにヴィッセル神戸戦も3ゴールを奪って引っ繰り返した。

 そしてAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を終えてから5連戦目になるFC東京との多摩川ダービーも、本来の川崎とは別の戦い方を強いられた。むしろ会心のゲームができたのは東京のほうで、試合後の長谷川健太監督のコメントにも実感がこもった。

「最近はゲームをやらせてもらえずに負けて来たが、今日はビルドアップから崩せたし、しっかりと裏もつけた。決定機も我々のほうが多かったと思う」

 実際、試合は完全にFC東京ペースで進んだ。だが川崎は、前半終了間際にワンチャンスを生かして先制。その後もFC東京がアダイウトンの仕掛けと長友佑都の内外からのフォローなどで左サイドから再三ゴールを脅かし、「いつやられていてもおかしくなかった」(車屋紳太郎)状態が続いた。だが川崎の鬼木達監督は、後半15分過ぎに3枚代えに出る。最前線のレアンドロ・ダミアンに代えて知念、マルシーニョに代えて小林悠、右インサイドハーフの脇坂泰人に代えて本来CBの谷口彰悟だった。

 それまでの川崎は右サイドの対応で完全に後手を踏み、FC東京はアダイウトン、長友、安部柊斗らが絡む攻撃で決定機を連ねていた。

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近東京五輪からプラチナ世代まで約半世紀の歴史群像劇49編を収めた『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』(カンゼン)を上梓。『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(ともにカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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