清水の元主将、なぜ伝統工芸の世界へ? サッカー界を離れることに「迷いはなかった」

静岡市の伝統工芸体験施設で働く清水エスパルス元主将の杉山浩太氏【写真:柳田通斉】
静岡市の伝統工芸体験施設で働く清水エスパルス元主将の杉山浩太氏【写真:柳田通斉】

【元プロサッカー選手の転身録】杉山浩太(元清水、柏):3月に清水を退職、静岡市の伝統工芸体験施設で“サードキャリア”へ

 世界屈指の人気スポーツであるサッカーでプロまでたどり着く人間はほんのひと握り。その弱肉強食の世界で誰もが羨む成功を手にする者もいれば、早々とスパイクを脱ぐ者もいる。サッカーに人生をかけ、懸命に戦い続けた彼らは引退後に何を思うのか。「Football ZONE web」では元プロサッカー選手たちに焦点を当て、その後の人生を追った。

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 今回の「転身録」は、清水エスパルス元主将の杉山浩太(36歳)だ。清水の下部組織出身の杉山は、闘志あふれるプレーでチームをけん引し、柏レイソルでも活躍。2017年シーズン限りで15年間の現役生活に別れを告げると、指導者の道を選ばず、清水の営業部でセカンドキャリアをスタートさせた。今年4月からは、静岡市の伝統工芸体験施設「駿府の工房 匠宿」の営業宣伝課長に転身。敢えてサッカーとは無縁の世界に飛び込んだ思い、サードキャリアの「今」を聞いた。(取材・文=柳田通斉)

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 JR静岡駅から西へ6キロの「駿府の工房 匠宿」。杉山は今、ここにいる。休館日の月曜日を除き、前掛けのあるユニフォームで館内を動き回っている。

「1日、1万8000~2万歩は歩いています。疲れることはないですし。小さい頃からサッカーをやっていて、体力があるってことですよね。それは本当に良かったと思います」

 その他にパソコンに向かっての事務作業、広報、宣伝、営業での外回りと、4月に転身したばかりとは思えない働きぶり。それは、静岡市から委託され「匠宿」を運営する「デザインオフィス創造舎」(本社・静岡市)の山梨洋靖社長が、うなるほどだ。

「浩太は今、匠宿のキャプテンです。視野が広いし、細かいところまで気づいて、悩んでいたり、弱っているスタッフに声を掛けています。そして、自分を追い込みながら働く。その姿は、まさにアスリートです」

 杉山自身にとっては、サッカーから完全に離れた日々だが、充実感あふれる表情で言った。

「引退前から、サッカーというより、『地元の静岡で働いていきたい』という思いが強かったので、ご縁があって今の仕事に就けたことは、心からありがたいと思っています。エスパルスの試合結果はチェックしていますが、正直、今は過去を振り返る余裕はないです」

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