新生ドルトムントは「狭く攻める」 智将の門下生が挑む“異形のサッカー”
【識者コラム】横幅40m以内の攻撃…今季ドルトムントのサッカーが一風変わっている
ドルトムントのサッカーが一風変わっている。ペナルティーエリアの幅でしかプレーしたくないようだ。最長90メートルのフィールドの横幅を使わず、約40メートル以内の幅で攻撃しようとしている。「攻撃は広く」がセオリーだが、ドルトムントは狭く攻めることにこだわりがあるようだ。
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狭くプレーすれば、相手も狭く守る。これだけだと良いことはなさそうだが、幅40メートルに固まる相手にボールを奪われても、素早くプレッシングすれば即時奪回がしやすいという利点が隠されている。ドルトムントは徹底してハイプレスを仕掛け、高い位置で奪い返すと、再び中央を錐で穴を開けるような攻撃を続ける。ハイテンポの攻守にやがて相手がついてこられなくなるという利点もあるだろう。ボールを保持して相手を疲弊させるという、バルセロナを中心とするポゼッション派とは対極の考え方だ。
幅40メートル、時には20メートルぐらいを攻め切る。前へ、前へというイメージの攻め方だ。カウンターアタックを中断するという判断はなく、前進あるのみ。これを成功させるためには、まずボールを停滞させないこと、そのために人が相手ゴールへ向けてスプリントすることがポイントになる。
ボールが止まらなければ相手は下がる。ゴールへ向けて下がるので、下がるDFの動きの矢印からずれた位置にポジショニングすれば、アタッカーは前向きにパスを受けられる体勢をとれる。
もう一つは追い越し。ボールホルダーはとにかく前進なのだが、DFに進路を塞がれると減速せざるをえない。減速せずに通過できれば一番いいが、1対1で余分な時間を取られてしまうとボールは停滞し、相手を後退させることができなくなる。そこでカウンターが発動したら、可能な限りボールより後方の選手がスプリントし、速度を緩めず、ボールホルダーが止まりかけたら追い越してボールを前進させる。
この前進あるのみの攻撃をまともに食らうと後退しながらの守備になるせいか、ボールをカットできてもこぼれ球を拾うのは勢いを持って攻め込んでくる側になることが多いようだ。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。