守備の激しさとプレミアの流儀 「トラップの瞬間」を狙うのは許容範囲のチャレンジ

プレミアの流儀とされる「トラップの瞬間」の守備に注目【写真:AP】
プレミアの流儀とされる「トラップの瞬間」の守備に注目【写真:AP】

【識者コラム】元日本代表DFが語っていた“4段階”の守備のセオリー

 守備でまず狙うのはインターセプト。それが無理ならコントロールしたボールが足から離れた瞬間を狙う。それもダメなら振り向かせないように守る。インターセプト→トラップ直後→振り向かせない、というのが守備のセオリーだと教わった覚えがある。

 先日、元日本代表DFの岩政大樹さんと話していたら、この守備の3段階のインターセプトとトラップ直後の間に、もう一つ狙いどころがあって、それでいくと4段階あると話していた。

 インターセプトとトラップ直後の間にあるのは、「トラップの瞬間」だそうだ。

 相手がボールに触る瞬間、相手の足と同時進行でこちらの足を出していく。インターセプトに似ているが、それほどクリアにボールを奪える状況ではなく、相手のほうが先にボールに触るだろうが、その時にこちらの足にボールが当たるかもしれない、という足の出し方になる。

 ヨーロッパのリーグが続々と開幕している。各国の開幕戦を見ていると、岩政さんの言うところの「トラップの瞬間」を狙う守備は随所に見られた。そのなかでも頻度的に飛び抜けていると感じたのがプレミアリーグだった。

 相手がボールに触る瞬間を狙って、容赦なく足を出していく。結果的にボールではなく足にタックルしてしまうケースも多く、ボールに当たっても当たらなくてもそのまま体同士がぶつかってクラッシュすることも多い。プレミアは「球際が激しい」とよく言われているが、トラップの瞬間を狙う守備意識の高さはその要因の一つだろう。

 ボールをコントロールする瞬間に相手の足が出てくるのは、攻撃側の選手にしてみれば嫌なものだ。それで奪われないにしても、コントロールしたボールにわずかに触られるだけでもプレーのリズムは崩れてしまう。自分とボールの関係を作り直さなければならず、状況判断も修正しなければならないからだ。

 自分のボールでも相手のボールでもない、その曖昧な状況で敢えてチャレンジしていくのがイングランドに根づいた守備の文化なのだと思う。それでファウルになってしまうことは半ば許容されているようで、足を蹴られたほうもあまり文句は言わない。もちろん蹴られたら痛いわけだが、そこに悪意を感じないのだろう。サッカーはそういうもの、お互いさまというわけだ。国によっては、その行為に悪意を感じるかもしれないが、イングランドのサッカーだと、そのへんまでは通常のプレーの範囲内ということらしい。

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西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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