A代表の序列上昇? 東京五輪で飛躍した「スペースを必要としない」MFと後継者候補

グループリーグを3連勝で首位通過したU-24日本代表【写真:Getty Images】
グループリーグを3連勝で首位通過したU-24日本代表【写真:Getty Images】

【識者コラム】五輪延期の1年で急成長した田中碧、ブスケッツのような“時間の操作”もできる

 東京五輪のサッカー男子はグループリーグを3連勝で首位通過した。ベスト4に入る力は十分あるが、この原稿を書いている時点で結果はまだ分かっていない。ただ、今回の五輪代表からA代表へつなぐという意味では、すでに成果は出ていると思う。

 プレースタイルが共通なのは、森保一監督を兼任させたので当然として、代表に直結する人材が出てきている。

 筆頭は田中碧だ。遠藤航とのボランチコンビは、そのまま日本代表に転用できる。すでに川崎フロンターレでの活躍は目覚ましいものがあったが、五輪が延期された1年で急成長した選手の1人だ。田中が素晴らしいのは、スペースを必要としないところである。

 ビルドアップの時にセンターバック(CB)の間、あるいはCBとサイドバック(SB)の間に下りてきて組み立ての起点になるMFは多いが、田中はあまりポジションを下げずにプレーしている。相手選手の中間にポジションをとってDFからのパスを受けていて、距離的にはすぐ近くに相手がいるのに平気だ。ファーストタッチに絶対の自信があるからだろう。

 ファーストタッチが足下から離れない。だから次のプレーが速い。速くプレーできるからスペースを必要としない。言葉にすると単純だけれども、単純だからこそ貴重でもある。宮本武蔵は「畳の縁の上を歩くのは容易だが、それが高くなると普通には歩けまい」ということを言ったそうだが、逆にファーストタッチが絶対的ならスペースの有無や相手との距離の影響は最小限になり、周囲の状態にあまり左右されない。田中のプレーにはそれがよく表れている。

 速くプレーできるので時間の操作もできる。ボールを止めてから蹴るまでの間に、田中はよく判断を変えている。スペイン代表のセルヒオ・ブスケッツなどもこれが上手く、止めて蹴り足を振る途中で判断を変え、どこへパスを出すかを変えているが、田中も同様のプレーをよくやっている。相手の出方を見ながら、最後まで判断を保留できるのだ。

 中山雄太も株を上げた。日本代表の左SBはいわば懸案事項だった。長年このポジションでプレーしてきた長友佑都の後継者が見つかっていない。長友本人が自身の後継者争いをしているような状態だったが、中山は有力候補に浮上したと思う。ボランチ、CBもできるユーティリティー性もある。SBのスペシャリストではないので専門性をどこまで獲得できるかは今後の課題になるかもしれないが、守備の固さ、左足のフィードの正確さで代表の左を確保するかもしれない。

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西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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