「中田英寿やケーヒル級の選手がいない」 豪州記者、W杯最終予選“同組”の日豪へ警鐘

2006年のワールドカップでオーストラリア代表と対戦したMF中田英寿【写真:Getty Images】
2006年のワールドカップでオーストラリア代表と対戦したMF中田英寿【写真:Getty Images】

国際舞台における両国の現実、欧州のハイレベルな環境で活躍する選手がいない

 実際、公平な目で見ればサウジアラビアやベトナムのファンでさえも日本とオーストラリアが自動出場権を獲得する可能性が高い国であると考えているだろう。だが、私はそう簡単にはいかないと思っている。日本とオーストラリアはともに2次予選を8戦全勝、失点わずか「2」で突破したが、相手はそれほど強くはなく、ほとんど夢遊病のような状態で勝ち上がったために得られるものはそれほど多くなかった。

 ここで注目すべきは、現在のライバル関係が始まった15年前と比べると、どちらもチーム状況が大きく異なっているということだ。

 2006年を振り返ると、両国ともに欧州のハイレベルな環境で活躍しているビッグネームがいたが、今はもはやそのような状況ではない。オーストラリアと日本のどちらにも欧州の中位リーグでプレーしている選手はいるが、ハリー・キューウェル、マーク・ヴィドゥカ、ティム・ケーヒル、中田英寿、小野伸二、中村俊輔のようなレベルの選手はいない。

 これが国際舞台における両国の置かれた現実だ。アジア以外の国に行って現在の日本代表とオーストラリア代表にいる選手の名前を聞いたところで、答えられる人はほとんどいないだろう。

 確かに主要なリーグでプレーしているディフェンダー(吉田麻也、冨安健洋)やゴールキーパー(マット・ライアン)はいるが、世界中の観客を熱狂させるようなタイプではなく、先に挙げたようなヨーロッパ中のファンを魅了したアタッカーたちと同じレベルの選手でもない。

 もちろん、両国にはエキサイティングな若手選手も生まれている。久保建英はスペインで成長を続けるチャンスがあるし、本間至恩はアルビレックス新潟から移籍すればスターになれるポテンシャルを秘めている(私にとって、彼は最もエキサイティングな日本の若手タレントだ)。一方、オーストラリアには今年Aリーグのタイトルを獲得したメルボルン・シティで印象的な活躍をしたマルコ・ティリオや、コナー・メトカーフがいる。

 しかし、彼らはあくまで可能性を秘めた若い才能であり、代表チームではまだ実績を残していない。今年の後半に行われる日本とオーストラリアの対戦では、どちらのチームにもU-23世代の若い選手が多く起用されるとは考えにくい。ソン・フンミン(韓国/トッテナム)やサルダル・アズムン(イラン/ゼニト)、メフディ・タレミ(イラン/ポルト)といった欧州で活躍する選手を擁するアジアの強豪2カ国と比べると、日本とオーストラリアにはトップレベルのスターがおらず、若い才能にも恵まれていない。

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スコット・マッキンタイヤー

東京在住のオーストラリア人ジャーナリスト。15年以上にわたってアジアサッカー界に身を置き、ワールドカップ4大会、アジアカップ5大会を取材。50カ国以上での取材経験を持ち、サッカー界の様々な事象に鋭く切り込む。

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