元Jリーガー監督が語る“ストライカー論” 「圧倒的な得点感覚」に脱帽した日本人FWは?

ポルトガル代表DFルベン・ディアスとイタリア代表DFキエッリーニ【写真:Getty Images & AP】
ポルトガル代表DFルベン・ディアスとイタリア代表DFキエッリーニ【写真:Getty Images & AP】

ストライカーから見た「嫌なDF」、2人のEURO出場選手を例に解説

 ハーランドや大黒氏のように優れたFWがいれば、反対にそのFWの自由を奪う優れたDFも存在するはずだ。林監督にはストライカー目線で、対戦するのが難しいDFについても聞いてみた。すると、現在開催中の欧州選手権に出場する2人のトッププレーヤーを例に解説してくれた。

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「サイズがあるDFはやっぱり後ろからの圧力もありますし、背負ってプレーするFWとしては怖い。その点でイタリア代表DFジョルジョ・キエッリーニ(ユベントス)の守備は凄いです。例えば、自陣のペナルティーエリア内で相手のFWに背負われた時、普通ならDFはPKが怖いのでずっしりと構えて立った状態で相手につきます。

 でも、そういう時でもキエッリーニはプレジャンプのように足を細く動かしていて、その動きがFWからしたらすごく嫌なんですよ。横に動かしたら足を出されてボールを突かれるんじゃないかと気になってしまう。そういう細かな駆け引きがすごく上手い。FWからすると構えられているより、いつ足を出してくるか分からないほうが嫌なんです」

 DFを背負った状態でプレーするFWにとっては、百戦錬磨のキエッリーニが仕掛ける駆け引きが次の動きの判断を鈍らせることになるようだ。

 では、反対にFWが前を向いた時の対応で嫌なのはどのようなプレーなのか。林監督は、“読みの鋭さ”が際立つポルトガル代表DFの攻略が難しいと挙げている。

「FWが考えていることを先読みして動くDFも嫌ですね。最近の選手だとルベン・ディアス(マンチェスター・シティ)。彼は非常に守備の技術が高くて、選手ではなく、スペースに向かってスライディングをするんです。これは実際にプレーを見てほしいんですが、例えばクロスを上げられそうになった時に、普通ならボールに対して足を出すと思いますが、そうするとファウルを取られやすい。

 そこで、ディアスはボールが入ってきそうなスペースに向かってスライディングして、そこにボールが当たるという感覚です。あれは相手が蹴りそうだなという場所やタイミングが分かっているからこそできる守備なんです」

 キエッリーニはセリエA、ディアスはプレミアリーグで日々強力なアタッカー陣と対峙し、守備スキルに磨きをかけている。点取り屋として12年のプロキャリアを積み重ねた林監督は、ストライカー目線でそのディフェンスに注目していた。

[プロフィール]
林陵平(はやし・りょうへい)

1986年9月8日生まれ。34歳。明治大で関東1部リーグ優勝を経験。同大卒業後にジュニアユース、ユースでプレーした東京ヴェルディに加入し、プロデビューを果たした。その後、柏レイソル、モンテディオ山形、水戸ホーリーホック、FC町田ゼルビア、ザスパクサツ群馬と計6クラブを渡り歩き、2020年シーズン限りで現役を引退。Jリーグ通算300試合出場67得点。21年から東京大学運動会ア式蹴球部の監督に就任した。

(石川 遼 / Ryo Ishikawa)



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