登録18人のリオ五輪で重要な”万能性”の輝き 有力候補に躍り出た手倉森Jの「代役10番」

どのポジションでも「決定的なプレーを」

 矢島は、湘南のMF山田直輝も輩出した北浦和サッカー少年団で、この日途中出場のMF前田直輝(横浜FM)とともにサッカーに打ち込み、中学からはJ1浦和のジュニアユースに加入した。それからトップ昇格まで、トップ下を基本ポジションにしながらも、2トップの一角やサイドアタッカーでもプレーする万能性を見せていた。2012年に浦和でトップ昇格を果たすと、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の下でシャドーを基本に、トレーニングマッチなどではボランチでも起用され、プレーの幅を広げていった。

 だからこそ、この日にサイドハーフからボランチにポジションを変えることになっても「景色が違っても、良い守備から入って、いい奪い方からゴールやアシストにつなげるという自分のプレーは変わらない」と、自分の軸がブレることなくプレーできる。常々、「ポジションに関係なく決定的なプレーをできる選手になりたい」と言い続けてきた矢島だが、まさにそれを有言実行したゲームになった。

 この日は、中島翔哉(FC東京)が招集外だったこともあり、背番号10を身につけた。今季から浦和から期限付き移籍で所属している岡山でも背負っている番号だが、「やっぱり代表で10番を背負うのは全然違う。そういうことを考えるとプレッシャーがかかるので、あまり考えないようにしていました(笑)」と、少なからず意識していたことを明かした。そして、プレーでその番号にふさわしいプレーを見せられることもまた証明している。

 このガーナ戦は8月のリオデジャネイロ五輪の初戦で対戦するナイジェリアを想定したアフリカ勢との戦いだった。とは言え、国内リーグに所属する選手を中心としたレベルが高いとは言えない対戦相手だったのも事実だ。それでも「あまり強いとは思わなかったけれど、センターバックがはね返す時のバネだったり、要所で強いなと感じました。五輪でナイジェリアと当たった時はもっとすごいのがいるのかな、と思いながら試合をやっていました」と、五輪本戦を見据えていたと話す。

 18人に登録枠が減り、さらにオーバーエージの起用も今後議論されていくなかで、アタッカー陣は競争が激しい。だからこそ、こうした万能性のある選手にはスポットライトが強く当てられるべきだ。手倉森ジャパンの立ち上げからチームを知る男は、その「決定的なプレー」でチームを勝利に導いていく。

【了】

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

 

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