闘莉王、震災で感じた“日本人魂” 被災地に勇気を与えた奇跡のパス【#あれから私は】

「普通の男はあそこで外す」カズのゴールを呼んだ闘莉王の頭でのパス

「みんなで力を合わせてどうにか復興しようという気持ちで試合が行われた。本当に周りの人たちのエネルギーがプラスで、いいエネルギーを感じる場所だった。(0-2から)最後にカズさんが入ってくれて、この男ならなんとかしてくれる、スタジアムもそういう雰囲気をすごく感じた。なんとかしてくれるという雰囲気のなかで、『なんとかしてくれるなら手伝ってやりたい』という気持ちだった。能活さんが蹴って、僕はカズさんの後ろにいた。落とし気味に頭でパスしたんだけど、普通の男はあそこで外す。綺麗に決めてくれるのがやっぱりカズさん。あの盛り上がり、得点は1点で変わらないけど、あの得点は10点ぐらいの価値があった」

 間近で見たカズダンスには心を打たれた。JリーグTEAM AS ONEの黄色のユニフォームを纏い、大阪の夜空に向かって決めポーズをするカズは「輝いていた。カズさんスターだなと思いました」と、忘れられない瞬間となった。

 あれから10年――。ブラジル出身の闘莉王だからこそ、震災と向き合い、日本という国について考えてきた。

「大変な苦しい悲しい本当にもう戻ってこられないような、すごく大変なことになってしまった人たちがいるなかで、あらためて日本という国、日本人魂はやっぱり素晴らしい。日本人にしかできないことがある。素晴らしい人たちがいる、勉強させてもらった」

 暗闇の中でもみんなで手を取り、光を見つけて進んできた。その力を闘莉王は信じている。10年経っても、20年経っても、何年経っても、震災のことを忘れず、“日本人魂”を忘れず、助け合う強さを持つこと。闘莉王が伝えたいことには、心にとどめておかなければいけない大事なものが詰まっていた。(文中敬称略)

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