W杯アジア2次予選は「国内組」で臨むべき コロナ禍は日本代表強化を再考する好機

昨年末はコロナ禍もあり欧州組で戦った森保ジャパン【写真:©JFA】
昨年末はコロナ禍もあり欧州組で戦った森保ジャパン【写真:©JFA】

【識者コラム】コロナ禍後も欧州組を自由に招集できる保証はない

 ようやくワールドカップ(W杯)アジア2次予選が再開される。残されたモンゴルとのアウェー戦(3月30日)は、千葉のフクダ電子アリーナで無観客での開催が決まった。

 当然コロナ禍の事情を踏まえれば、欧州組の招集はハードルが高いため国内組中心のメンバーで臨むことになるはずだ。本来なら東京五輪の開催を睨みU-24代表で臨むべきだが、モンゴル戦前日には北九州での強化試合が予定されている。

 ただし、もしコロナ禍が解決したとしても、今までのようにアジア予選に欧州組を自由に招集できる保証はない。世界のサッカー界は、欧州とそこで競い合うクラブを中心に動いている。そしてクラブに所属する選手たちは大事な財産だ。選手の価値が高まるほどクラブ側は送り出すのを渋り、逆に日本代表にとっては不可欠になる。だからこそ所属選手を借り受ける立場の日本代表は、可能な限り歩み寄る姿勢を見せる必要がある。

 例えば一昨年のW杯アジア2次予選で森保一監督は、モンゴル戦(ホーム)とミャンマー戦(アウェー)を、ほぼ欧州組で戦った。2試合を通してピッチに立った国内組は、永井謙佑(FC東京)と橋本拳人(FC東京/現ロストフ)、鈴木武蔵(北海道コンサドーレ札幌/現ベールスホット)だけだった。だが6-0で大勝したモンゴル戦などは、日本が32本のシュートの雨を降らせたのに対し相手はゼロ。CKも「17対0」と圧倒的な力の差が浮き彫りになった。

 もちろん代表チームの活動時間は限られているので、一緒にトレーニングを積み試合をすることには意味があるのかもしれない。しかし、この試合のために長距離移動をした選手たちがコンディションを崩して戻れば、早晩クラブ側も態度を硬化させる可能性があるし、もしそれでクラブでの出場機会を減らしてしまえば代表強化にとっても不利益になる。レベル格差のある試合では、経験則に基づくリテラシーにも違いが出る。楽な試合だからリスクも減るわけではなく、むしろ過去には小野伸二(現・北海道コンサドーレ札幌)が五輪予選のフィリピン戦で後方から悪質なファウルを受け大怪我をしたケースもある。

 今後もJリーグの財政事情が劇的に変わらない限り、日本の優秀な選手たちが欧州を目指す構図と、日本代表が「欧州組」と「国内組」の二極構造になるのは変わらない。一方で「国内組」は「欧州組」の貯蔵庫であり、国内の若い選手たちに国際経験を積ませてアピールさせるのは、すでに欧州で活躍する選手たちのコンディション維持と同様に、強化の両輪となるはずだ。そういう意味でも、コロナ禍はアジア予選の戦い方を再考する良い機会になるのかもしれない。

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近東京五輪からプラチナ世代まで約半世紀の歴史群像劇49編を収めた『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』(カンゼン)を上梓。『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(ともにカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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