「受け入れて前に進むために」 横浜FC高橋秀人がコロナ感染を告白した理由

難しい現実や激しい葛藤の末に導き出した考えとは

 自身のコロナ感染から約半年経った今シーズン、高橋は横浜FCに活躍の場を移した。「おかげさまで、今はもう後遺症はない」と笑顔を見せたが、なかなか理解されにくい“コロナ後遺症”を経験し、周囲とのズレを感じたからこそ、1人のプロサッカー選手として、そして日本プロサッカー選手会会長として言葉にする使命があると考えている。

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「本来であれば選手のコンディションがきちんと整ってから試合をやるべきなんでしょうけど、コロナ禍での過密日程や、僕自身のコロナ後遺症によってサッカーから心が離れていかないように配慮してくれたクラブの考えで、コンディションがまだ7割ぐらいだったのに試合に出たこともあって、結果的には右肘の脱臼と第5中足骨骨折という怪我をしてしまいました。もちろんJリーグの事情やクラブの事情があることは分かっていますが、自分のコンディションと正直に向き合って本当に試合ができる状態なのかどうかを考えないといけないかなと思いました。

 もちろん最終的には監督がメンバーに選んでくれて、それに納得してピッチに立ったのは自分なので、怪我の責任は僕にあります。ただ選手が試合に出たいのは当たり前のことですし、選手は試合に出て結果を残して評価されるものなので、多少無理をしてでも試合に出てしまうと思うんです。だからこそ、コロナに感染してしまった選手の査定についても、他の選手とは別で考えないといけないのではないかとも感じました」

 コロナ禍の昨シーズンは、Jリーグにとっても初めての経験になった。まずは感染者を出さないために感染対策を徹底し、Jリーグ全体で尽力した。しかし、ゼロリスクはない。感染リスクを上手くコントロールしながら、Jリーグを再開していくことも大事だったのではないだろうかと高橋は考えている。だからこそ、実際にコロナに感染して感じたことを、共有の財産としてJリーグに話したという。

「僕がコロナに感染した頃は、感染した人が悪い、というような偏見の目があった。だけど、しっかりと感染対策をしていても感染する時はする。だから大前提として、Jリーグと社会における感染対策をしっかりとしたうえで、感染してしまうのは仕方ないので、それでも感染してしまったら、それを許容できる社会にしていかないといけないと思います。そして告白することで自分自身もコロナ感染を受け入れて前に進みたかった。」

 Jリーガーのなかで誰よりも責任感が強い。語ることは「自分の使命」だと赤裸々に明かしてくれたコロナ感染の体験には、「サッカー界をいいものにしていきたい」という願いも込められている。

[プロフィール]
高橋秀人/1987年10月17日生まれ、群馬県出身。東京学芸大学在学中からFC東京のJリーグ特別指定選手として2シーズン在籍し、卒業後にFC東京に加入。ボランチに定着し7シーズンを過ごすと、2017年にヴィッセル神戸へ移籍。2018年からはサガン鳥栖でプレー、2021年に横浜FCに移籍した。現在はケガでリハビリ中だが、J1リーグで248試合出場を記録している。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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