ヘディングと脳震とうの危険性 “野放し”な空中戦、ルールを厳格化すべき

脳震とうのリスクが伴うヘディングの競り合い(写真はイメージです)【写真:Getty Images】
脳震とうのリスクが伴うヘディングの競り合い(写真はイメージです)【写真:Getty Images】

【識者コラム】ヘディングの競り合いで起こる脳震とう、元プロが明かした危険行為

 Jリーグは今季から脳震とうに関して新たなルールを加えた。交代枠を使いきっていても、選手が脳震とうを起こした場合は1人を交代させることができる。頭へのダメージの危険性を考慮してのものだ。

 脳震とうの多くはヘディングの競り合いで発生している。頭と頭、あるいは頭に肘が当たることが主な原因だろう。競り合いで脳震とうを起こす場面は、Jリーグでも外国の試合でも草サッカーでも見てきた。脳震とうを起こした後もプレーを続行した人がいて、後で本人に聞くと「何も覚えていない」と言っていたものだ。だから恐いのだ。

 元Jリーガーの話だが、相手FWにヘディングシュートされそうで間に合いそうもない時は「相手の頭の前に頭を出す」と言っていた。目の前にDFの頭が出てくると、FWも上体を思い切り振ってヘディングするのを躊躇するからだそうだ。ただ、相手がなんの躊躇もなく頭を振ってきたらヘディングした後に頭同士が思い切り衝突するかもしれないわけで、かなり危ない行為とも言える。「さすがプロ」と感心する一方、これでは脳震とうも起こるはずだと思った。

 ジャンプする時に腕を振り上げ、ヘディングする時に肘を張るようにと教える指導者もいる。誰とは言わないが、世界でも有名な監督だ。指示しているのを見たわけではないが、たぶんそうだろう。彼が指揮するチームの選手は皆そうしているからだ。そして、当然の帰結として肘で相手の頭部に打撃を加えている。

 1950年代のハンガリー代表で、「黄金の頭」というニックネームがあったサンドロ・コチシュはヘディングの名手だった。当時のプレー写真を見ると、コチシュはヘディングの瞬間に腕が上がっていない。直立不動みたいな姿勢で宙に浮いてヘディングしている。たまたまその写真がそうだったのか、それとも当時は腕を上げたり肘を張ったりするフォームのヘディングではなかったのかは分からない。ただ、腕を振り上げなければエルボーが頭部に命中する危険はない。もっとも、これで競り合うと頭同士がぶつかるリスクはありそうだ。

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西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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