ドイツの学者が「PKキッカーの心理状態」を研究 一瞬の勝負と駆け引きの“ドラマ”

ホッフェンハイムでPKキッカーを務めるFWアンドレイ・クラマリッチ【写真:Getty Images】
ホッフェンハイムでPKキッカーを務めるFWアンドレイ・クラマリッチ【写真:Getty Images】

【ドイツ発コラム】ホッフェンハイムGKバウマンの驚異的なセーブ率、背景にある詳細な分析

 11メートルの距離で向き合い、相手DFの邪魔を受けずに、自分のタイミングでシュートが打てる。決めなければならないというプレッシャーはある。でもPKは決めて当たり前。それが定説だろう。

 そんななか、ホッフェンハイムGKオリバー・バウマンが凄い。今シーズン公式戦で、9回の被PKのうち、なんと5回もセーブしているのだ。その秘密について、バウマンはこう明かしている。

「僕の場合は長く待って、素早く飛びつく。その前にもちろん少し観察することは必要だよ。前回相手はどこへ蹴り込んでいたのか。どのようにボールへ走り込んでくるのか。蹴る前に顔をもう一度上げるのか、上げないのか。そうしたすべての要素がある」

 直近だとバウマンは、第18節ケルン戦(3-0)でFWアントニー・モデストのPKを阻止している。

「彼の顔をじっと見てたんだ。でも彼は僕が動いているかどうかを見ていない。そうなると蹴る瞬間に飛ぼうと考える。あとはもうタイミングだね」

 今の時代、分析は当然行われ、癖や特徴はデータとして伝搬される。試合中にPKとなった段階で、過去のデータからキッカーがどこへ蹴るかの傾向を伝えることだってできる。GKの様子を最後まで見て、動きの逆に蹴り込もうとするキッカーも多いが、それも定番になってきたことでしっかり対処してセーブなんてこともある。実際にここ最近のブンデスリーガではPK失敗が少なくない。となると、キッカーのほうもそれに応じた対処を身につけておいたほうがいいのだろうか。

 ホッフェンハイムには優れたPKキッカーもいる。クロアチア代表FWアンドレイ・クラマリッチだ。ブンデスリーガで22回PKを蹴り、20回決めている。これ以上の成功率を誇るのは、バイエルン・ミュンヘンのポーランド代表FWロベルト・レバンドフスキだけ。そんなクラマリッチは、PKを蹴る時に次のようにしているという。

「どこへ、どのように蹴るかはいつも変えている。GKが僕とのPKに準備していることは知っているから」

 GKがキッカーを分析するのなら、キッカーがGKを分析することだって必要になってくるのだろう。

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中野吉之伴

1977年生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。最近はオフシーズンを利用して、日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。

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