ブンデス「ワースト記録保持」を望む理由 シャルケ“31戦ぶり勝利”に独5部クラブが安堵

31試合ぶりに勝利をしたブンデスリーガのシャルケ【写真:AP】
31試合ぶりに勝利をしたブンデスリーガのシャルケ【写真:AP】

【ドイツ発コラム】低迷シャルケの不名誉記録回避に安堵、独5部タスマニア・ベルリンの思い

 31試合ぶりにシャルケが笑った。

 勝てない時期はどんなクラブでもある。だが、まさかこれほど長くなるとは誰も思わなかっただろう。

「そのうちどこかで1試合でも勝てば、それをきっかけにまた浮上してくるはずさ。だって俺たちはシャルケなんだぞ」

 そう思っていたシャルケファンのほうが多かっただろう。でも状況はどんどん悪くなっていった。「そのうち勝てるだろう」だったのが、「もう勝てないかもしれない」という雰囲気へと変わっていく。やってもやっても上手くいかない。監督が悪いのか、選手が悪いのか、クラブが悪いのか。どこをどのようにとってどうやったら、改善されるのか。全く分からない。どん底だった。

 だからマヌエル・バウム監督が更迭され、クリスティアン・グロスが新監督として迎え入れられても、シャルケを覆っていた深い霧はそう簡単に晴れることはないという傾向の報道のほうが多かった。

 そんなシャルケが勝った。U-23でプレーしていた19歳アメリカ人FWマシュー・ホッペがホッフェンハイムを相手にハットトリックの大活躍を見せ、4-0で快勝。シャルケ関係者の安堵はどれほど大きいものだっただろう。残留に向けてはまだまだ厳しい戦いが続くが、少なくとも一つのきっかけを作ることができたのだから。

 さて、そんなシャルケの面々と同じくらい、あるいはひょっとしたらそれ以上にホッとしたのがタスマニア・ベルリンの人々だろう。というのも、「ブンデスリーガ歴代最長未勝利」というものはクラブにとって永遠に刻まれるべき大切な記録だからだ。

 1965-66シーズンに、タスマニアはシーズン31試合連続未勝利という記録を打ち立てた。本来不名誉なこのワースト記録は、同時にクラブをブンデスリーガに結びつけるメモリーでもある。現在5部リーグに所属するタスマニア会長のアルミア・ヌミッチは、自分たちの思いを語っていた。

「クラブはこの記録のおかげで多くの注目を集めている。私は仕事でいろいろな場所を行き来しているが、初めて会った人と自己紹介を交わすと『タスマニア? ブンデスリーガのワースト記録を持っているあのタスマニアか?』とみんな知っているんだ。我々にとってはある意味、礼拝される歴史であり、このワースト記録を保持することはポジティブなことなんだ。スポンサー集めの際にもプラスに働く。ドイツにおいてどのクラブがメディアで取り上げられているかという分析があったんだけど、並みいるブンデスリーガとともに我々タスマニアの名前もあったのだ。今、アマチュアクラブの我々が、だよ。

 我々には大きなファンのつながりがある。彼らがファンショップを動かしたり、ソーシャルメディアで情報を流してくれるんだ。それこそオーストラリア、デンマーク、ノルウェーという国の人からユニフォームの注文が入ったりする。1人のノルウェー人は全セットを注文して、ホームゲームの応援に足を運んでくれるんだ。

 当時の選手は今でもクラブと結びついているよ。当時のバス移動は本当にきつかったみたいな思い出話をいろいろと聞かせてくれるんだ。その分、そのあとで飲むビールの味は格別だ、とかね(笑)」

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中野吉之伴

1977年生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。最近はオフシーズンを利用して、日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。

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