過熱する「ロングスローの是非」 Jリーグでかつて話題となった反則的な迫力と背徳感

イングランドの選手にすり込まれているロングボールとハイクロスのDNA

 ラフプレーはともかく、ロングボールとハイクロスが一部で批判され続けてきたのは、「これではやがて勝てなくなる」という見立てがあったからだ。

 英国からサッカーが伝えられたヨーロッパ諸国や南米諸国は、イングランドとは異なるプレーを見せていた。イングランドのライバルであるスコットランドの流れを汲んだショートパス戦法である。技術とインテリジェンスのサッカーが、体力のイングランドを凌駕するのにさして時間はかからなかった。イングランドが英国以外のチームにホームで初めて敗れたのは1953年だが、それ以前にもアウェーでは敗れていたのだ。

 決定的だったのはGKとセンターバックの進化だった。ハイクロスが脅威ではなくなっていった。そうなるとイングランドの優位性は削り取られ、依然として強豪国ではあったが、かつての圧倒的な強さはなくなった。

 ロングスローはサッカーの一部だ。ただ、一部でしかない。ロングスローがすべてなら、対策がいきわたった時点で優位性は消える。

 2018年ロシア・ワールドカップ、イングランドは久々にベスト4まで勝ち上がった。セットプレーからのヘディングが得点源。現在の選手たちは昔とは違うだろうが、たぶんこういうのは好きなのかもしれない。イングランドのDNAなのだろう。

 好きでやっているなら、いいんじゃないかな。世界的には少数派になってしまったと思うけれども……。

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西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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