内田篤人らが輝いた時代はどこへ? 18戦未勝利、シャルケは「落ちるところまで落ちた」

地元紙はブラックジョーク 「結婚するならシャルケファンがいいぞ」

 新監督候補には元RBライプツィヒのラルフ・ラングニックなどいろいろな名前が挙がっていたが、最終的にはマヌエル・バウムに落ち着いた。アウクスブルク、その後U-18ドイツ代表監督を務めていたバウムは教師としての資格を持ち、戦術指導に長けた指導者と評価されている。

 確かにシャルケが求めていた部分ではある。ヨハン・シュナイダーSD(スポーツディレクター)は、「人間としても監督としても、マヌエル・バウムはシャルケに非常に合うと確信している」と話し、バウムは「できるだけ速やかに、チームに成功体験をもたらすことが早急な課題だ。チームのクオリティーは間違いないのだ」と言葉に力を込めていた。

 ただ「キッカー」誌によるファンアンケートによると、バウムはシャルケ監督に適任と答えたのはわずかに25%ほど。不安のほうが大きいのが確かなところだ。そんななか、注目の存在となっているのがアシスタントコーチに就任した元ブラジル代表DFナウドだ。長年シャルケのためにプレーし、そんなクラブへの忠誠心からもファンに愛された存在だろう。

 シュナイダーも「ナウドの選手として公式戦500試合以上という経験は、新しいコーチングチームにとって大きなプラスになる。シャルケのことを誰よりもよく知っているし、チームに多くのポジティブなエネルギーをもたらしてくれるだろう」とシュナイダーも大きな期待を寄せている。

 シャルケファンは苦しい状況でも、クラブ愛を忘れたりはしない。嘆き節もたくさんある。どうポジティブに考えても、今クラブはものすごく苦しい。それでも、シャルケファンは献身的にクラブのために自分たちがやれることをやり続けるだろう。

 地元紙で、こんなブラックジョークを見つけた。

「結婚するならシャルケファンがいいぞ。どれだけ何度もがっかりすることに遭遇したとしても、彼なら君をいつまでも見捨てないだろうから」

 シャルケファンのクラブ愛は本物だ。そんなファンの思いに、今度こそクラブは応えることができるだろうか。落ちるところまで落ちたのなら、後は這い上がるしかないのだ。見栄なんていらない。恥も外聞もなく、どんな時でもクラブのために全力で汗をかき、必死に戦い続ける姿を、選手も、指導者も、クラブ関係者も見せていかなければならないのだ。

 シャルケは、そうやって戦ってきたクラブだったではないか。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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