川崎の“新黄金時代”幕開けへ 「交代でクオリティーが上がる」…見事な新世代の台頭

三笘薫(18番)や田中碧(25番)といった若手の活躍が目立つ【写真:高橋学】
三笘薫(18番)や田中碧(25番)といった若手の活躍が目立つ【写真:高橋学】

【識者コラム】C大阪との首位攻防戦を制して10連勝、「川崎一強」の展開が決定的

 今年のJ1は、序盤3分の1を終えた時点で早くも「川崎一強」の展開が決定的になった。

 戦力的に圧倒的に優位な川崎フロンターレが、コロナ禍による中断明けから10連勝と突っ走るのに対し、他のクラブは例年通りに拮抗状態で星を潰し合っているのだから、もはや焦点は「どんな記録が生まれるのか」「いつまでこの状況が続くのか」に変わったと見るべきだろう。

 確かに第11節に直接対戦した2位のセレッソ大阪は、ロティーナ監督の戦術が功を奏して序盤は主導権を握った。川崎が低い位置から組み立てようとすれば前線から追いかけ、アンカーの田中碧の脇のスペースには、清武弘嗣や坂元達裕がフリーで入り込み両サイドバックも高い位置に上げて先制ゴールも決めた。

 だが珍しくミスも多く劣勢だった川崎は、二つのセットプレーから前半であっさりと逆転。後半に入ると形勢は一気に傾いた。C大阪は2点目を奪い1点差に肉薄すると次々に交代のカードを切るのだが、逆に「川崎は交代でクオリティーが上がった」(ロティーナ監督)とチーム間の落差は広がっていく。結局終盤はいつものように川崎が相手を自陣に釘付けにする状態に押し込み、終わってみれば5-3の快勝となった。

 川崎がリーグ連覇を果たした一昨年頃でも、ライバルチームの関係者からは「中村憲剛が引退すれば、また変わる」という声が出ていた。だが今年はこうした見解を完全に覆し、逆に中村が離脱している間に見事なまでに新世代への移行をアピールした。

 基盤となったのは育成の成功だ。かつて関東圏では、東京ヴェルディ、横浜F・マリノス、あるいは柏レイソルなどが優勢だったが、現在は三好康児や板倉滉が欧州へ進出していく一方で、田中が中心的な存在に成長し、新加入の三笘薫や脇坂泰斗らに象徴されるようにユースから大学経由で加入し活躍する選手が目立つようになった。早くから欧州を目指す素材の意欲は尊重しながら、生え抜きで大学に進学した選手たちもしっかりとフォローする。

 またクラブには、風間八宏前監督が就任して以来明白な色がついており、ユース年代でプロに届かなかった選手たちでも狭いスペースでもぶれないテクニックというベースは共有されている。

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近東京五輪からプラチナ世代まで約半世紀の歴史群像劇49編を収めた『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』(カンゼン)を上梓。『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(ともにカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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