失意の天才ファンタジスタ、復活のPK奪取と成功に再脚光 「呪いを振り払った」

フランスW杯当時のロベルト・バッジョ【写真:Getty Images】
フランスW杯当時のロベルト・バッジョ【写真:Getty Images】

98年W杯チリ戦、復活を印象付けたシーンを母国メディアがクローズアップ

 イタリアのサッカー専門サイト「トゥットメルカートウェブ・コム」における過去の同じ日付に起こった出来事を振り返る企画で、1998年6月11日のイタリア代表とチリ代表の一戦をクローズアップ。元イタリア代表FWロベルト・バッジョが相手の手にボールを当ててPKを獲得したシーンが再び脚光を当てている。

 この年、フランス・ワールドカップ(W杯)のメンバー入りを果たしたバッジョだったが、主役は同じ“ファンタジスタ”に分類されるタイプでもMFアレッサンドロ・デル・ピエロになると目され、「10番」もデル・ピエロに与えられていた。しかし、若きファンタジスタはシーズン最終戦となったUEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝レアル・マドリード戦での負傷を抱えてW杯に突入していた。

 そうした事情もあり、W杯初戦のチリ戦でのスタメンには「18番」を背負ったバッジョが起用されていた。そのバッジョは前半10分、DFパオロ・マルディーニによるロングフィードに走り込むと、後ろから飛んできたボールをダイレクトで繊細にコントロールしたパスを送る離れ業を見せてFWクリスティアン・ヴィエリの先制点をアシスト。しかし、そこからイタリアはチリのFWマルセロ・サラスに2ゴールを奪われて逆転を許した。

 初戦を負けで入りたくないイタリアに残り時間が減っていったなか、残り5分に近づいたところでペナルティーエリアのわずか外の右サイドでボールを持ったバッジョは、目の前に立つ相手のわずか横をすり抜けるようなコースを狙って中央へパス。それがペナルティーエリア内に立っていた相手の腕に当たってハンドの反則となり、与えられたPKを自ら蹴り込んで2-2の引き分けに持ち込んだ。

 このPK成功は「パサデナの呪いを振り払った」とも称された。94年のアメリカW杯でバッジョは決勝ブラジル戦のPK戦で5人目に登場して失敗し、その時点でブラジルの優勝が決まる悲劇の主役となっていた。

 後に国際サッカー連盟(FIFA)は、ハンドのルールの基準に照らし合わせればミスジャッジであるという見解も示したが、当時はバッジョが相手の手を狙って蹴ったと、まことしやかに語られたプレーだった。現在はハンドのルールが明確化され、PKに絡むことからビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)のチェックが入る事情を考えれば、PKは与えられないだろう。

 それでも、失意の4年前から不死鳥のごとく甦ったバッジョを世界に印象付けたという意味では、インパクトのあるPK獲得とその成功だったのは間違いないと言えるだろう。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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