左足のキック精度は「世界レベル」 “攻撃的GK”西川と“リスクを負わない”日本代表の姿

日本代表がポゼッションを強化したいなら…西川は貴重な候補

 西川周作(浦和レッズ)は、つなげるGKの先駆けだった。

「つなげる」は「蹴れる」と表裏一体である。ショートパスが無理な状況は、ロングパスが有利な状況だからだ。つなぐためのGKはロングキックも必須になる。西川は近くへつなぐのも、遠くへ蹴るのも上手い。左足のロングキックの球筋、精度ともに素晴らしく、これについては世界レベルにある。

 育成年代ではフィールドプレーヤーも経験したことが生きているのだが、西川はもともと右利きで左足はあまり使えなかったという。もはや左利きにしか見えないが、左足は小学生、中学生の時にフィールドプレーヤーとして練習して使えるようになった。

 昨年のJリーグでは、ゴールを守るというGKの本分とも言えるパートでもトップクラスの結果を出した。日本代表がポゼッションを強化したいなら、西川は貴重な候補になるはずである。

 2019年のアジアカップでは、権田修一(ポルティモネンセ)とシュミット・ダニエル(シント=トロイデン)、同年のコパ・アメリカでは川島と大迫敬介(サンフレッチェ広島)がGKだった。この人選を見る限り、日本代表にビルドアップを強化しようという意図は感じられない。シュミットはキックの上手いタイプだが、起用されたのはグループリーグ最後のウズベキスタン戦(2-1)だけ。重視しているのが守備力であることが分かる。

 GKに求められるのがまず守備力なのは当然だが、攻撃力を強化して守備負担を減らすという発想に踏み切れていない。つまり、ロシアW杯のベルギー戦は何度でも起こり得るのが現状と言える。実際、アジアカップ準決勝のイラン戦(3-0)では、イランがハイクロスとセカンドボール回収の波状攻撃に出た時、日本はただ堪え忍ぶだけだった。パワフルなイランの攻撃を跳ね返し続けたのは評価できるものの、試合の流れを自ら変えるのではなく変わるのを待つだけでは、より強力な相手に対して不安は残るわけだ。

 GKをビルドアップに参加させるのはリスクも伴う。

 昨年、J1ではつなげるGKが増加していた。優勝した横浜F・マリノスの朴一圭、飯倉大樹(ヴィッセル神戸)、高木駿(大分トリニータ)など、攻撃の強化へ踏み込んだチームがあった。ただ、まだ1試合だけだが今季の開幕戦では、GKへのプレスからボールを奪って得点に直結させようという傾向もはっきり見られている。GKをビルドアップに参加させるチームにとって、常に直面するリスクだ。

 日本代表は、まだそこまでのリスクを負っていない。違う言い方をすると、ポゼッションを進化させるための最初の一歩を踏み出していない。そのリスクをいつ負うのか、それとも別の方法を探るのか。それが今のところはっきりしておらず、現状維持に甘んじている。

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西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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