「本番に強い選手を育てる」 メキシコのタフな“育成ピラミッド”、現地日本人コーチが解説

U-23メキシコ代表でコーチを務める西村亮太氏【写真:福岡吉央】
U-23メキシコ代表でコーチを務める西村亮太氏【写真:福岡吉央】

良い選手は1部クラブに一極集中、映像のプラットフォームも完備

 メキシコのクラブでは、成績が残せなければ6カ月ごとに監督が変わる。それはトップチームだけでなく、下部組織の指導者たちにも当てはまる。選手も出場機会を求め、他クラブに移っていくケースもある。塩沢氏は「シーズンが6カ月ごとに入れ替わるので、新陳代謝が起こりやすい」と、その特徴を明かす。

 メキシコ2部には下部組織の全国リーグがないため、1部クラブが2部に降格すると、下部組織の選手たちは他の1部チームへと移籍する。給田氏は「2部のチームは下部組織のレベルが低いので、良い選手は1部に集まって一極集中します。だから代表のスタッフもスカウティングがしやすい。日本だと下部組織はJ1、J2で力の差があまりないし、高校のサッカー部も全国にある。地元の上手い選手を見つけて強化するためにトレセンのシステムがありますが、メキシコにはないし、それは必要ありません。クラブの組織で吸い上がっているので、素質がある選手が育つ環境がすでにできているんです」と話す。

 リーグに、映像のプラットフォームが完備されていることも大きい。トップ、U-20、U-17の試合が行われるスタジアムやクラブの練習場には複数のカメラが設置されており、各クラブの指導者や連盟関係者はそれぞれの世代の全試合の動画を見ることが可能。スカウティングにも役立てることができ、他チームの下部組織選手を獲得する際にもチェックすることができる。もちろん、年代別代表選手の選考にも役立っている。

 こうした環境やリーグのシステム、ルール、そして代表の年代別の強化によって、メキシコはアンダー世代の世界大会で好結果を残している。その若手が成熟し、A代表でも結果を残すようになれば、メキシコがW杯で躍進する日もそう遠くないかもしれない。

(福岡吉央 / Yoshiteru Fukuoka)



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