「本番に強い選手を育てる」 メキシコのタフな“育成ピラミッド”、現地日本人コーチが解説

U-20は多くのチームがトップと同じスタジアムで試合を行う【写真:福岡吉央】
U-20は多くのチームがトップと同じスタジアムで試合を行う【写真:福岡吉央】

トップからU-17までのリーグ戦に存在する、若手選手の起用ルール

 このルールは、メキシコのA代表がW杯でなかなか決勝トーナメントを勝ち上がれないことから、現状を打破するために作られている。メキシコはこれまでW杯に計16回出場。ともに自国開催となった1970年と86年のベスト8が最高で、94年から前回2018年のロシア大会まで7大会連続でグループリーグを突破しているが、いずれも決勝トーナメント1回戦で敗退。8強入りが厚い壁となって、立ちはだかっている。国内ではW杯のたびに「またベスト8に進めなかった」と悲観的な声が出ており、コンスタントに若手を育て、将来的にA代表でも結果を残せるようにするために設けられているのが、若手起用ルールだ。

 例えばU-20では、半年区切りで行われるリーグ戦で、今年なら2001年生まれ以降の選手を計1000分以上出場させなければならない。出場時間を計上できるのは1試合最大270分まで。1000分に達しない場合は勝ち点3が剥奪される。一方で、トップに控え選手向けのリーグ戦がないため、オーバーエイジ枠として4人(うち外国人2人)のベンチ入りが可能。うち2人が、同時にピッチ内に立てるというルールも存在する。

 またU-17では、同様に2004年以降生まれの選手を計1000分以上出場させなければならず、出場時間を計上できるのは同じく1試合270分まで。1000分に達しない場合も同様に勝ち点3が剥奪される。

 そして2年前からは、トップの試合でも若手起用のルールが設けられた。2020年前期なら、1998年以降生まれの選手を計1000分以上(ただし99年以降生まれの選手は出場時間×100%、98年生まれの選手は出場時間×50%で計算)、出場時間を計上できるのは1試合最大270分までで、計1000分に満たない場合は勝ち点3が剥奪される。カップ戦でもすべての試合で、試合ごとに99年以降生まれの選手を計180分以上起用しなければならない。

 メキシコの1部ではベンチ入り18人のうち、外国人選手が9人までベンチ入り可能というルールがあり、チームは12人まで外国人選手を保有できる。つまり若手起用ルールは、外国人偏重になり、若手が育たないことを懸念してのルールでもある。また、14チームで構成される2部にも同様のルールがあり、試合数の違いから、設定されている出場時間は計722分とされている。

 メキシコは日本の約5倍の国土面積を持ち、移動が大変なことから、U-15は地域によって二つのリーグに分け、U-13は定期的に一極集中開催で大会を開催するが、U-20、U-17だけでなく、そこにも代表のスタッフが視察に訪れ、目ぼしい選手をチェックする。またU-13では、試合ごとに相手チームの監督に選ばれた選手1人がメディア対応をするという教育システムも存在。子供の頃から取材にも慣れさせることで、一人前の選手へと育てていく。U-12、13、14、16は地域リーグがあり、全国リーグがない世代でも多くの実戦機会が与えられている。

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