ドイツサッカーと新型コロナ感染 陽性反応のハノーファーDF「遠い世界のことが…」
【ドイツ発コラム】初の感染者となったハノーファーDFヒュバース、原口らチーム関係者は14日間の自宅隔離
日本代表MF原口元気が所属するハノーファーのDFティモ・ヒュバースに新型コロナウイルスの陽性反応が出たとクラブから公表されたのが、3月11日。その後、DFヤネス・ホルンにも陽性反応が出たことで、選手はもちろん、チーム関係者は14日間の自宅隔離を余儀なくされる事態となった。ドイツで初めてのケースだっただけに、大変な事態だったことだろう。
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ヒュバースは当時の心境について、次のように明かしている。
「僕にとって最初は全然現実的なものではなかったんだ。もちろん、メディアを通じてウイルスに関するニュースは読んでいたよ。でも、どこか遠い世界のことだと思っていた。ウイルスがドイツにも到達しているなんて感覚は本当になかった。それがその感覚を持った時が、自分が感染した時だなんて。ウイルスに関して措置は凄いことになってきている。でも、そうすることが正しいと思うんだ。サッカーはとても素敵なものだ。でも人生には、もっと大事なものがある。みんなの健康と社会のあり方は特にそうだよ。そのために僕らサッカー選手も、自分たちにできることで貢献しないと」
自宅隔離中の選手はチームからトレーニングプランを受け取り、可能な限りコンディションを維持する以外やりようがない。今やるべき最善の策であることを関係者は皆理解し、それぞれで日常生活をやり繰りしている。とはいえ、1日の多くの時間、何もしないでじっとしているのは、ハードにトレーニングをするよりもずっときついことだ。適度な気分転換をしていくことが気持ちの安定にも欠かせない。
キャプテンのMFマルビン・バカロルツは「今の生活でハイライトは、犬と一緒に庭に出ている時だね。部屋から外に出て、新鮮な空気を吸って、遠くの自然を眺めて。本当に素敵だなって感じるんだ。実際に自分がこういう事態にならないと、それがどれだけきついことかはちゃんと分からない」とコメントを残している。スウェーデン代表FWヨン・グイデッティは子どもたちと一緒に仮装してダンスをしたり、廊下でミニボーリングをしたりと楽しみを見つけている。スポーツディレクターのゲルハルト・ツーバーは、「選手のために自分たちがいることが大事であり、そのためには頻繁に連絡を取ることが大切だ」と、こまめに選手とコンタクトを取っているようだ。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。