愛される宮市亮、“悔しさ露わ”の先にある充実感 「怪我の時は感じられなかった」
ザンクト・パウリ宮市、ドレスデン戦で決定機決めきれず 「なんでポスト当たるの?」
スタジアムを包み込む熱狂のなか、元日本代表MF宮市亮は思わず天を仰いで悔しがった。現地時間14日に行われたブンデスリーガ2部の第22節、ザンクト・パウリが最下位ディナモ・ドレスデンをホームに迎えた一戦の後半アディショナルタイムのシーンだ。
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徹底的に守備固めをして、0-0の引き分けに持ち込もうとするドレスデンに対し、猛攻を続けていたザンクト・パウリが相手の一瞬の隙をつき、左サイドから途中出場のMFクリストファー・ブフトマンのクロス。そのまま放物線を描いてクロスバーを直撃したボールが、ゴール前に詰めていた宮市へとこぼれてきた。相手DFは完全に逆を突かれ、動くこともできない。角度がないところからだったが、胸トラップから迷いなく右足から放たれたシュートがGKの右脇をすり抜けていく。
だが、ボールはゴールへ吸い込まれる代わりに左ポストを叩いて、ゴール前へと跳ね返ってきた。このボールを拾ったザンクト・パウリのMFヴァルデマール・ソボタが三たびシュートに持ち込んだが、これも相手DFに当たり、宮市の目の前を通ってゴールラインを割っていく。前半から攻め込み続け、何度も決定機を作りながらも1点が奪えないでいたザンクト・パウリは、最後の絶好機でもゴールを奪うことができず、直後に試合終了のホイッスルが鳴った。
ザンクト・パウリとディナモ・ドレスデン。残留を争う直接対決ということもあり、ホームスタジアムにはほぼ満員となる2万8980人が詰めかけた。ドイツでも指折りの熱狂的なファンがチームを支える両チームの対戦だけに、試合前からスタジアムをピリピリとした雰囲気が包み込む。アウェー席からの「ディナモ」コールが起こると、その何倍もの「ザンクト・パウリ」コールが一気に飲み込んでいく。
試合後にはディナモファンの一部が柵を乗り越えてザンクト・パウリファンと乱闘騒ぎを起こし、18人が負傷。ピッチ上では終盤にあったPKが取り消されたことに納得がいかないドレスデンのマルクス・カウチンスキ監督が猛烈に審判団に抗議し続けたことでイエローカードをもらうことに。一方、ザンクト・パウリのGKコーチは感情の高ぶりを抑えることができずに、不満を叫びながらロッカールームへと消えていった。
一つの試合。でも、そこには様々な思いが交錯しているのだ。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。