Jリーグ「トップクラス」の守護神は? ドイツの日本人GKコーチ、昨季J1の”全失点”分析

シュツットガルトU-14、15のGKコーチを務める松岡裕三郎氏【写真:本人提供】
シュツットガルトU-14、15のGKコーチを務める松岡裕三郎氏【写真:本人提供】

浦和GK西川は日本人選手トップクラスの成績を残す

 そしてもう1人、全体の平均を上回るポジティブな結果を残したのが浦和の西川選手です。西川選手はリーグ戦33試合に出場し、総失点は49失点。そのうち「防げない失点」が25ゴール(51.02%)、「防げる、改善できる失点」が20ゴール(40.82%)、「ミスによる失点」が4ゴール(8.16%)でした。

「防げる、改善できる失点」と「ミスによる失点」の原因で多かったものが、「GKテクニック」で21失点。そして「戦術的ポジショニング」で13失点、「ぶれない、先に倒れない」が5失点でした。ランゲラック選手と同様に防げるシュートはしっかりと防いでいるが、改善できる失点としてのほぼすべてがGKテクニックという結果になりました。そのテクニックの改善点としては彼の良さである反射神経や機動力に、ダイナミックさが加わればビッグセーブの数もさらに増えるでしょう。リーグ戦のほぼ全試合に出場し、全体の平均を上回るポジティブな結果を残した日本人GKは西川選手のみでした。

 チームによって戦術が異なれば、そのチームが必要とするGKも変わってきます。変わらないのはGKの一番大事な仕事が「点を取らせないこと」である点です。それを追求するために、失点の原因を分析し、日々のトレーニングで改善、強化していかなければなりません。

 そして、シュツットガルトの育成でも取り入れているように、失点だけでなくビッグセーブの分析もしていけば、選手の長所が明確に分かり、個性を伸ばすことにもつながります。今回の分析はかなり厳しめに行いましたが、ミスによる失点をなくし、防げる失点の部分を改善することは、ジョゼ・モウリーニョ監督が以前「キーパーの出来によって、1年間の勝ち点が10も違う」と言っていた通り、チーム成績に直結するのは間違いないでしょう。

※注1:「GKテクニック」→キャッチやボールに対してダイビング、コラプシング、ディフレクティング、フットブロック、1対1でのブロックなどゴールを守るうえで必要なテクニック。

※注2:「戦術的ポジショニング」→主に相手がシュートを打つ時のGKの立ち位置や、1対1で対峙した相手との距離感などのポジショニング。

※注3:「判断」→ゴールディフェンスからスペースディフェンスへ、ゴールディフェンスから1対1への切り替えや飛び出しの判断。

※注4:「ぶれない、先に倒れない」→相手のプレーを予測してその予測が当たらずに失点することや、至近距離からのシュートや1対1でGKの重心がぶれて反応できない、または後ろに倒れてしまうケース。

<PROFILE>
松岡裕三郎(まつおか・ゆうさぶろう)

1984年10月8日生まれ。鹿児島の名門・鹿児島実業高で全国高校サッカー選手権大会に2度出場。夏のインターハイでは大会優秀GKにも選ばれた。同志社大に進学し、卒業後に単身ドイツへ。独7部フェルバッハで選手としてプレーした後、指導者に転身。2017年6月にUEFA B級GKライセンスを取得。シュツットガルト・キッカーズのU-15、16のGKコーチを経て、現在はドイツ2部VfBシュツットガルトのU-14、15でGKコーチを務めている。

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