独王者バイエルンの“狂った歯車” 長谷部も実感「監督を代えたらという問題では…」

ブンデスリーガ第10節をもってニコ・コバチはバイエルン監督を辞任【写真:Getty Images】
ブンデスリーガ第10節をもってニコ・コバチはバイエルン監督を辞任【写真:Getty Images】

ケアレスミスをしないはずの選手たちが、初歩的なミスをしている現実

 だが、バイエルンで問題なのは、本来そんなケアレスミスをしないはずの選手たちが、初歩的なミスをしてしまっているという点なのだ。「やるべきサッカー」と「やっているサッカー」と「やりたいサッカー」がクロスしていない。そして判断の基準になるものがないから、コンビネーションも機能しない。守備への切り替えが圧倒的に遅い。

「とてもがっかりしているし、悲しい気持ちでバスに乗るだろう。でも昨シーズンもこうした上手くいかない状況から、立ち上がり、ダブルを獲得したんだ。戦うことを諦めるつもりはない」

 記者会見の最後にコバチが口にした言葉。だが、次のチャンスは訪れなかった。

 コバチは自分の信念に、あまりに正直すぎたのかもしれない。それは立派なことだった。そして昨季2冠を達成したことも過小評価されるべきではない。しかし、欧州でもトップクラスのバイエルンというクラブが定める目標と、選手が欲する欲求の間で最適なバランスを見つけ出し、さらに向上させていくことは、やはり至難の業だった。

 コバチの後任として、アシスタントコーチのハンシィ・フリックが暫定監督を務める。ドイツ代表をブラジル・ワールドカップ優勝に導いた立役者の1人だ。2-0で勝利した6日のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)オリンピアコス戦、そして9日のブンデスリーガ第11節ドルトムントとの大一番の結果、内容いかんではそのまま続投の可能性もあるという。

 一方で首脳陣は、代表戦の中断期を利用して後任監督探しを進める意向を表明しており、元ユベントスのマッシミリアーノ・アッレグリ、元マンチェスター・ユナイテッドのジョゼ・モウリーニョの名前もリストアップされている。果たして、迷走するバイエルンをまた一つにまとめ上げることができるのは誰なのだろうか。

中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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