16年の時を駆け抜け、引退の道を選んだ鈴木啓太 「浦和の男」が最後に伝えたかった思いとは

全てを捧げた男への最大限のリスペクト

 その光景を目に焼き付けるように、チームメートとゆっくりと場内を一周した鈴木は、最後に浦和サポーターの中心部になる北ゴール裏スタンドの前で足を止めた。拡声器が手渡されると、鈴木は絶叫した。

「お前ら、最高だよ!」

 いつも丁寧に言葉を選ぶ男の、心からの叫びだった。

 メインスタンド前まで帰ってくると、チームメートから背番号と同じ13回胴上げされ、最高の笑顔で宙に舞う。そしてスタジアムを後にしようとしたその瞬間、北ゴール裏から発生し、スタジアム中を包み込んだのは、鈴木のチャントやコールではなかった。

「We are REDS!!」

 全てをチームに捧げてきた背番号13に対する、最大限のリスペクトの表現だったのだろう。埼玉スタジアムに響き渡ったコールは、鈴木啓太が今も、そしてこれから先の未来も、“浦和の男”であることを何よりも示していた。

【了】

轡田哲朗●文 text by Tetsuro Kutsuwada

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

 

 

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