16年の時を駆け抜け、引退の道を選んだ鈴木啓太 「浦和の男」が最後に伝えたかった思いとは

今を大事に、未来を見つめて――

 時にこみ上げてくるものに言葉を詰まらせながら、笑顔を浮かべながら、真摯に言葉を紡いだ。

 鈴木は自身のスピーチの中で、「この場所で、リーグチャンピオンを取り、シャーレを掲げ、アジアの頂点を掴み、人生で最も情熱に溢れた時間を、みんなと過ごすことができて最高に幸せでした」と話した。一方で、全てが終わった後のミックスゾーンで、この16年間で最も印象に残っていることをあらためて問いかけると、未来を見つめながら言葉を残した。

「過去は過去ですし、思い出はあるんですけど、僕は今日の試合と言いたいです。今がどうなのか。それをどう感じられるかは、過去に積み重ねたこと次第になると思う。そういう意味では、今日この瞬間に勝利で終わって、セレモニーをしてもらって、サポーターにたくさん来てもらって、こうしてたくさん取材をしてもらえる。今が、僕はすごく印象に残っている。過去に生きると、いつまでもサッカー選手の気持ちになってしまう。僕は未来を見たいし、今を大切にしたい」

 いつだって、“今この瞬間”を大事にして走り続けてきた鈴木らしい言葉だった。

 満員の浦和サポーターたちは、セレモニーで鈴木の言葉に聞き入っていた。赤く染まったスタジアムを埋め尽くす存在についても、あらためてこう語る。

「家族であり、時々監督で、時々すごく褒めてくれる親戚の人のような(笑)。いろいろな顔があるけど、目的や目指すところが一緒の仲間。そういう存在です。浦和レッズはサポーターなしでは語れないし、僕のサッカー人生もサポーターなしでは語れない」

 

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