長谷部誠、“輝かしい1年”の最終決戦へ フランクフルトはCLを目指し「勇敢に攻める」

チェルシーとのEL死闘から3日後、マインツに0-2敗戦 最終節を前に6位転落
普段ならどんな試合結果に終わっても、すぐに気持ちを落ち着かせる。厳しい状況下でもポジティブな要素を見つけ、そこから活路を切り開いていく。そんな長谷部誠がこの日は少し違った。
12日に行われたブンデスリーガ第33節、マインツとの“ライン・マインダービー”。0-2で相手にリードを許したまま試合終了の笛が鳴ると、しばらく両手を腰に当てたまま何度もうつむいた。胸中には、どんな思いがこみ上げていたのだろうか。勝ち点を「54」から積み上げられず、最終節を前に6位に転落。ミックスゾーンではいつもと比べると、やはり落ち込んでいる様子が窺えた。
「まだあと1試合あるんで、まだ(来季のUEFAチャンピオンズリーグ/CL、あるいはUEFAヨーロッパリーグ/EL出場権獲得の)可能性はあるんで、そこにむけて切り替えないといけないんですけど、今日に関して言えば本当に失望のほうが大きいですね」
この試合を引き分け以上で切り抜けられれば、少なくとも来季のEL出場(6位以上)を確定させることができていた。そして18日の最終節、アウェーで対戦するのが優勝争い真っ只中のバイエルンであることを考えると、なんとかこの試合で勝ち点3を上乗せしたいというのがチームの願いだった。
だが、わずか3日前に行われたEL準決勝チェルシーとの死闘の疲れが、どうしても残っている。ただでさえ過密日程だったところで、イングランドの強豪チェルシーを相手にアウェーで120分+PK戦を戦い、最後の最後で負けてしまった(2戦合計2-2/PK3-4)。肉体的な面だけでなく、頭にも、そして心にも大きな痛手が残ったことだろう。
「木曜日にヨーロッパリーグの激闘を終えて体もそうだし、頭の部分での切り替えっていうのも、自分たちはもちろんそこに関して全力でチャレンジしたけど、それができてなかったと思う。木曜日の試合に注いだ力というのは、実際大きすぎたかなというのは正直感じた」
前半こそ攻守のバランスは維持され、何度か良い形でゴールチャンスも作り出した。だが、後半にミスから連続失点を喫すると、そこから追い上げる余力はこの日のフランクフルトには残っていなかった。なんとかしたくても、なんともできない。
フランクフルトにとって、悔やまれる試合結果なのは間違いない。それでも、ここからもう一度気持ちを切り替えなければならない。4位ボルシアMGとは勝ち点「1」差。CL出場という目標に向けて、もう一度モチベーションを高めていかなければならない。そんな状況を知る長谷部が、はっきりとした口調で答えたのが、「リーグとヨーロッパリーグと両方を狙いにいくとやってきたけど、今の時点から振り返っても、あの時フランクフルトは同じ決断をしたと思いますか?」というこちらの質問を受けた時だ。

中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで、さまざまなレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス取得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、16-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。最近はオフシーズンを利用して、日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで精力的に活動している。