長谷部誠、ドイツ人記者も唸らせる冷静さ 敗戦後に見せた堂々たるリーダーの振る舞い

ELとリーグ戦で連敗 「もう一回自分たちの足もとを見つめていかないと…」

 上手くいかない試合後は、気持ちの切り替えも難しいものだ。ミックスゾーンでの対応を嫌がる選手もいる。でも長谷部は、この日も当たり前のように落ち着いた声でこちらの取材に丁寧に対応し、待ち構えるドイツ人記者に囲まれては、試合のことを自分の言葉でしっかりと語っていく。

 地元記者が、後半2分に2枚目の警告を受けて退場処分となったMFジェルソン・フェルナンデスの交錯シーンについて聞かれた時は、「ボールに行っていたと思うけど、審判もビデオ審判も(2枚目のイエローカードで退場という)判断をしたと言っていた。じゃあそれ以上、僕は何も言えないでしょ」と答えて肩をすくめると、取材陣からは「その通りだ」と笑いが起こり、和やかな空気に。質問をした記者は「もちろん、わざとじゃないし、起こりうることだよ」という長谷部の言葉を、頷きながらメモを取っていた。

 負けたことが悔しくないはずはない。来季のUEFAチャンピオンズリーグ出場権獲得が現実的な目標になっているチームにとっては、手痛い取りこぼしだ。でもだからこそ、この負けを引きずらないことが重要になる。

「ヨーロッパリーグとリーグ戦と連敗して、もう一回自分たちの足もとを見つめて、自分たちの良い時というのを取り戻していかないといけないと思う。踏ん張りどころかな」

 百戦錬磨の男は焦りを微塵も感じさせなかった。あらゆる経験を力に変えることができる。ミスが目立つ展開でも冷静さを保ち、頭に血が上ってしまう若いチームメートをコントロールしていく。チームを整え、押し上げることができる存在なのだ。

 精神的支柱である長谷部とともに、今季のフランクフルトはきっとここからもう一度調子を上げてくる。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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