ドイツ代表を覆う異様な空気感 「W杯の悪夢」と「世代交代」の先に希望を見出せるか
2019年初陣でセルビアにホームで1-1 独紙「これほど静かな代表戦は今までにない」
2018年はドイツ代表にとって、忘れられるものなら忘れ去りたい最悪の年となってしまった。前回大会の優勝国として臨んだロシア・ワールドカップ(W杯)では、まさかのグループリーグ敗退。その後の代表戦でもパッとしない。新たに始まったUEFAネーションズリーグではフランス、オランダを相手に一度も勝てないまま降格となってしまった。
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迎えた19年、新たなスタートを切るために、そして22年カタールW杯で再び世界の頂点に辿り着くために、ドイツ代表のヨアヒム・レーブ監督は抜本的な改革に乗り出そうとした。その一つとして積極的な世代交代を決断。FWトーマス・ミュラー、DFマッツ・フンメルス、DFジェローム・ボアテングの3人を今後代表に招集しないと発言したのだ。
14年ブラジルW杯優勝メンバーであり、代表チームのなかでも主柱の存在だった3人だけに、この発表はさまざまな議論を呼んだ。20年欧州選手権(EURO)、そして22年W杯に向けたチーム作りを促進していくうえで、はっきりとしたサインを打ち出したいとするレーブ監督の決断を指示する声がある一方で、これまでの功労者に対してもっと他のやり方があったのではないかという指摘も少なくない。
記者会見でも、この件に関して質問が集中する。レーブ監督は何度も「素晴らしい選手たちであり、代表チームにおける彼らの功績を心から評価している。ただ、今後将来に向けて彼らはプランに入っていないということだ」というような答えを、何度も口にしなければならなかった。
そんな微妙な空気感のなかで20日に行われた国際親善試合のセルビア戦だが、スタメンの平均年齢こそ大幅に下がったものの、相手にあっさりとリードを許してしまうなど前半はパッとしない試合展開に終始。後半持ち直して同点には追いつけたが、2点目が取れないまま1-1の引き分けで終わってしまった。
試合後の雰囲気は、傍目にも良い感じはしなかった。そんななかドイツサッカー連盟の二人のスタジアムDJが、観客を安心させようとしたのか、こんなことを言っていた。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。