ドイツ代表を覆う異様な空気感 「W杯の悪夢」と「世代交代」の先に希望を見出せるか

ドイツ代表のレーブ監督【写真:Getty Images】
ドイツ代表のレーブ監督【写真:Getty Images】

完成度が低い若きドイツ代表 EURO予選初戦のオランダ戦は苦戦必至か

 試合後の記者会見では、レーブ監督が自分たちの現状をもう一度認識してもらえるように丁寧に語っていた。

「今、チームにはたくさんの若い選手がいる。(ユリアン・)ブラント、(ティモ・)ヴェルナー、(セルジュ・)ニャブリといった選手はゴールをしなければならないという状況で、ゴールを決める経験を積んでいかなければならない。昨年のパリでのフランス戦やオランダ戦では、100%のチャンスを決めきれずに同点や負けで終わってしまった。

 守備でもそうだ。何一つ妥協することなく最後までプレーする。今日の試合だと失点の場面がそうだ。簡単に(セルビアのルカ・)ヨビッチが、完全にフリーになってしまった。トレーニングで、できるだけシミュレーションできるようにしていく。結局厳しい試合では、そこが大事になる。だからこそ、前半の経験は必要なものなんだ」

 新しくチーム作りをするというのは、簡単なことではないのだ。選手を入れ替えれば、すべてが好転し出すなんてことはない。流れを取り戻すためには、歯車を自分たちではめ込み、噛み合わせ、回していかなければならない。そしてその作業には、途方もない時間と労力が必要となるだろう。

 24日には、アウェーでEURO予選の初戦に臨む。相手は最近好調のオランダだ。現時点での完成度で言えば、苦戦必至なのが正直なところだろう。だからこそ、今できる全力で立ち向かい、一つでも二つでも成功体験を積み重ねていくことが重要なのだ。長い道のりだからと途方に暮れて立ち尽くしてしまったら、ゴールにはちっとも近づけない。強い決意を持って前に進んでいくことだ。その背中を見て、ファンは必ず支えようと立ち上がるはずなのだから。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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