コロンビア代表と“獅子王”バルデラマ 破天荒で魅力的だったパスサッカーの記憶

バルデラマらが去り、いつの間にか現代的な普通のチームに…

 ともあれ、コロンビアは奇妙でスリリングだった。良いのか悪いのかはよく分からないが、「もっとやれ!」と応援したくなる魅力があった。彼らにはあの大道芸が普通のサッカーなのかもしれないが、何にも縛られていない自由な風が吹いていた。勝つために必死にやっているはずなのに、そんなことはどうでもいいようなプレーぶりだった。

 長く君臨したバルデラマが去り、相棒のフレディ・リンコンたちもいなくなると、コロンビアはいつの間にか現代的な普通のチームになった。バルデラマたちが一種の突然変異で、その後のコロンビアのほうが進歩したということなのかもしれない。ただ、時代に合わせていくのが進歩なら、それが良いかどうかは考えものだ。ガブリエル・ガルシア=マルケスの小説『百年の孤独』のようなコロンビアが懐かしい。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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