堂安の“時間差PK”に見るVAR判定の盲点 運用ルールを巡る試行錯誤は続くか

もしファウルとVAR判定の間でゴールが決まっていたら…

 そんな日本が後半12分、今度はVAR判定でPKを獲得する。同8分、左サイドの原口からのパスを受けた堂安がドリブルでペナルティーエリアに侵入したところ、後ろから足を引っ掛けられて転倒する。しかしUAEの主審は一度ノーファウルとしてプレーを流した。

 その1分後、ベトナムは最初の交代カードを切り、グエン・フイ・フンに代えてグエン・バン・トアンを投入する。そして10分、主審はVARで映像を確認し、2分後の12分に日本にPKを与えたのだった。

 堂安が倒されてから4分が経過しており、その間にベトナムは選手交代をしている。結果的に日本は堂安のゴールでベトナムを下してベスト4に勝ち進んだわけだが、ルールの運用に関しては疑問の残るゴールでもあった。

 試合後にそれを指摘したのは、フリーライターの西部謙司氏だった。西部氏は我々が作業をしているデスクに来ると、「堂安が倒されても主審は試合を続行し、ベトナムの選手の交代を認めた。もしもその4分間に交代選手がゴールを決めたら、日本のキックオフで試合は再開されるだろう。その後にVARで日本のPKが認められたら、どういうジャッジになるの?」と疑問を呈した。

 確かに、プレーオンの4分間に、例えばファウルがあればFKで試合を再開すればいいし、CKや警告、退場者が出ても同様だ。そして、その後にVAR判定からPKと認められたらPKで試合を再開すればいい。しかしベトナムか日本がゴールを決めた後に試合を再開し、その途中でVAR判定からPKとなった場合はどうなるのか。

 ゴールは認めつつ、PKを与えるのか。それとも反則のあった時点でアウト・オブ・プレーとしてゴールは取り消し、PKでの再開としてアディショナルタイムにカウントするのか。話していても前例がないだけに、結論は出なかった。

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六川 亨

1957年、東京都生まれ。月刊サッカーダイジェストの記者を振り出しに、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任。01年に退社後はCALCIO2002、プレミアシップマガジン、サッカーズ、浦和レッズマガジンなどを創刊して編集長を務めた。その傍らフリーの記者としても活動し、W杯や五輪などを取材しつつ、「サッカー戦術ルネッサンス」(アスペクト社)、「ストライカー特別講座」、「7人の外国人監督と191のメッセージ」(いずれも東邦出版)などを刊行。W杯はロシア大会を含め7回取材。現在は雑誌やウェブなど様々な媒体に寄稿している。

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