堂安の“時間差PK”に見るVAR判定の盲点 運用ルールを巡る試行錯誤は続くか
アジア杯では準々決勝からVAR採用、ベトナム戦では勝負を分けるシーンで活用
アジアカップ準々決勝でベトナムと対戦した日本は、後半12分に堂安律が自ら獲得したPKを決め、2試合連続となる1-0勝利でベスト4一番乗りを果たした。同日に行われたイラン対中国は、優勝候補筆頭のイランが着実にゴールを重ねて3-0と圧勝。この結果、28日の準決勝で両国が激突することが決まった。日本がアジアカップの決勝トーナメントでイランと対戦するのは、これが初めてとなる。
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ベトナム戦はVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)に泣き、VARで笑った試合だった。
まず前半24分、日本は遠藤航のカットから南野拓実、原口元気とつないでシュートを放ち、この試合初めてのCKを獲得する。柴崎岳の左CKに北川航也と冨安健洋がニアに走りダミーとなると、ゴール正面から吉田麻也がヘディングで合わせ、ネットを揺らした。
しかし、直後にスタジアム内の大型ビジョンでリプレーを見たベトナムのパク・ハンソ監督は、吉田にハンドがあったとしてテクニカルエリアに出てアピール。主審もすぐに今大会の準々決勝から導入されたVARで確認したところ、吉田のシュートは手に当たってからゴールに入ったとして取り消された。
この判定に対し、森保一監督は「VARは特に選手に話はしていません。AFCの役員が来て1回レクチャーを受け、我々はルールに従うということで、話を聞いて終わりました。選手は気にしないでプレーしてくれたと思います」と、特に意に介したことはなかったそうだ。
前半は平均年齢23.25歳と若く、中2日で試合の日本に対し、ベトナムは中3日と1日のアドバンテージがあることもあり、日本は後手に回っていた。そんな状況でつかんだ最初のビッグチャンスで先制したのは、サウジアラビア戦の再現でもあったが、取り消されても吉田は「もしかしたらハンドだったかなという感じもあった。仕方なかった」と振り返ったように、日本はすぐに気持ちを切り替えて試合に集中した。
六川 亨
1957年、東京都生まれ。月刊サッカーダイジェストの記者を振り出しに、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任。01年に退社後はCALCIO2002、プレミアシップマガジン、サッカーズ、浦和レッズマガジンなどを創刊して編集長を務めた。その傍らフリーの記者としても活動し、W杯や五輪などを取材しつつ、「サッカー戦術ルネッサンス」(アスペクト社)、「ストライカー特別講座」、「7人の外国人監督と191のメッセージ」(いずれも東邦出版)などを刊行。W杯はロシア大会を含め7回取材。現在は雑誌やウェブなど様々な媒体に寄稿している。