“ありえない”ことが起きた堂安のPK判定 サッカーの常識を破る1分後のVARの問題点

堂安がペナルティーエリア内で倒されるも、プレーは続行。しかし、その後VARが適用され日本にPKが与えられた【写真:田口有史】
堂安がペナルティーエリア内で倒されるも、プレーは続行。しかし、その後VARが適用され日本にPKが与えられた【写真:田口有史】

約1分間のインプレー後にVARで確認 PK判定前のベトナムの選手交代は本来認められない?

 アジアカップ準々決勝からVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が導入された。そして日本対ベトナムの一戦では、早速VARが大活躍している。

 まず、吉田麻也がCKから決めたゴールはハンドだったとして、ノーゴールとなった。主審はいったんゴールの判定をしていたが、無線でアドバイスを聞いてVARで確認、ノーゴールに覆っている。決勝点となった堂安律のPKも、当初はファウルと判定されていなかった。こちらも主審がVARで確認してからPKの判定に変わった。

 堂安へのファウルは、草サッカーならまず確実にPKにはならないと思う。VARだから足を踏まれているのが分かった。重要な判定に関しては機械の助けを借りて正確を期すのがVAR導入の趣旨なので、これはこれでいい。ただ、このシーンは判定の是非とは違うところで、大きな疑問を感じた。

 堂安が倒されたのは、手元の時計で後半8分だった。主審はファウルを取っていないのでプレーは続行されている。その後、いったんプレーが切れた時にVARで確認し、PKを宣した。堂安の得点が決まったのは同12分だった。

 その間、ベトナムは選手交代を行っている。これが同9分。つまり、問題のシーンからVARによって判定が変わるまで、約1分間はプレーが流れていたわけだ。

 もし、この1分間にベトナムがゴールを決めていたらどうなるのか。

 現行の運用では、おそらくベトナムの得点は認められない。日本のPKに遡って試合は再開される。VARはインプレー中の確認ができない。なんらかのアドバイスが無線で入ったとしても、いったんプレーが切れてからでないと確認はできず、従って主審の最終的な判定も下されない。なので、もしこのようなケースが生まれた場合は、ベトナムの得点でプレーが切れてからVAR確認となり、日本のPK獲得以降の1分間はなかったことにされてしまうのだ。

 1分間は、サッカーでは短い時間ではない。少なくともベトナムが、あるいは日本が、その間にゴールすることは十分可能な時間である。あるいは得点機会阻止などでレッドカードが出された場合はどうするのか。その退場処分も「なかったこと」になるのが筋ということになる。たとえ相手選手をぶん殴っても、退場にはならないことになる。

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西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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