日本が支配率「23.7%」でサウジに競り勝った要因は? “想定内”の劣勢で光った3大ポイント

ポイント1:「割り切ったゲームコントロール」

 試合後に柴崎岳が「結果が出たことは満足ですし、勝つことに徹した」と前置きしながらも、「今後彼らとやる時には、こういう試合を繰り返さないというか、こういう展開はなるべく減らしたい」と語ったように、日本はボールポゼッションを放棄する作戦を立ててこの試合に臨んだわけではないようだ。しかし、立ち上がりの状況から自分たちが思うようにボールを保持できないと判断。いかに相手に決定的なプレーをさせないかというプランニングは準備できており、何度か危ないシーンがありながらも、1試合を通して実践できたことは確かだ。

 対策の一つは、サウジアラビアの攻撃は必ずと言っていいほど両サイドの高い位置を起点にするが、結局は中にいる選手にボールを入れて、ワンツーやスルーパスなどで中央を崩しにくる傾向が強い。柴崎は語る。

「彼らは中央突破が非常に魅力的なところがあるので、僕と(遠藤)航がしっかりと中を締める、中でプレーさせないと。クロスは試合を通してそんなに怖くなかったので、なるべく中をやられないようにというのは心がけていた」

 最初のうちは日本も、高い位置でボールを奪おうとサイドに守備の人数をかけていたが、そこで奪いきることが難しいと判断してからはボランチの遠藤と柴崎は中央に残り、サイドのディフェンスはサイドの選手に任せて、相手が中に入れてくるボールやカットインしてくる動きへの対応に徹していた。

 確かにサウジアラビアにサイドからクロスを上げられても、ゴール前にいるのは168センチのファハド・アル・ムワラドと174センチのフセイン・アル・モカハウィ、173センチのアブドゥルアジズ・アル・ビシぐらいで、アウトサイドの選手もそんなにペナルティーエリア内まで入ってこずにセカンドボールを狙っている状況なので、一発で合わせられる危険はほとんどなかった。

 強引に日本の最終ライン裏を取りにくるようなスルーパスやドリブルに対してはセンターバックの冨安がかなり奮闘し、ミドルシュートに対しては吉田麻也を中心に誰かが体を入れていた。結果的にGK権田修一が直接セーブする機会はほとんどなく、ポジショニングのミスでシュートコースを与えるようなケースも見られなかった。

 地味ながら効いていたのが、中盤の底からチャンスの起点となるMFアブドゥラー・オタイフに対するチェックだ。攻撃面であまり良いところがなかった南野拓実も、FWの武藤嘉紀と協力しながらオタイフが縦にボールを出せない状況を作り続けた。こうした地味な役回りをオフェンシブなキャラクターの選手がやりきるのは簡単ではないが、サウジアラビア戦での日本は勝利のためにFWもDFも関係なく、守備のタスクをやりきっていた。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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