高速化する世界のカウンター “ブレーキをかける”日本とボール奪取前に動くリバプール

Jリーグでよく見かける「そんなに慌てるな」とブレーキをかけるベテランの姿

 ボールを奪った、素早くパスをつないだ。ここで受けた選手がコントロールして、即時に良い場所へ走っている味方へ正確なパスを蹴れるかどうか。

 例えば、パスの距離が30メートルとして、コントロールして一歩で蹴れるのか。それとも、もう一回ボールを突いてからでないと蹴れないのか。カウンターはスピード勝負なので、ひと手間かけるともうチャンスは失われることも多い。技術の裏付けがカウンターの成立に影響する。

 リバプールは個々の技術が高い。それがカウンターを成立させている要因の一つではある。ただ、判断自体もアグレッシブで、ミスになるかもしれない状況でも縦パスを狙って速い攻め込みを狙う。その結果、ミスになってしまうこともあるのだが、その時は全体を一気に押し上げてハイプレスで敵を封じてしまう。

 この「攻撃→守備」の切り替えもシームレスだ。そもそも味方がボールを奪う前に攻撃に動き出しているチームなので、カウンターを躊躇するケースは少ない。そういう戦い方で意思統一ができていて、それに向いている選手を揃えているのだ。

 リバプールのようにカウンターを躊躇しないチームはそう多くない。Jリーグでも「そんなに慌てるな」とブレーキをかけているベテラン選手をよく見かける。彼らの判断は正しいのかもしれない。リードしている場合なら、技量を無視して急いだ結果ボールを失ってしまうよりも、とりあえずキープして押し込んでしまったほうが守備面でも無理がないという理屈は分かる。

 けれども、もしかしたら、そのベテランがカウンターのスピードについていけないだけなのかもしれない。ボールを失った場合の守備まで含めると、それに耐えられるフィジカルがないからかもしれない。つまり、単に楽をしようとしている、自分のプレースピードにチームを合わせようとしている疑いもあるわけだ。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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