好きこそモノの上手なれ めぐが巡るスペイン育成ダイアリー Vol.2 「スペイン流トレーニングの真実」

 小堺マシアめぐみが、スペインの育成現場をリポート。第2回目は、エスパニョールフベニールBがバルサ戦に向けて行ったトレーニングメニューを紹介する――。

 

好プレーには「Muy bien!(とてもいい!)」

 今季のリーガ・ナシオナル・フベニールが幕を開けた。エスパニョールのフベニールBは、ホームでプラットと対戦し、2-1で開幕戦を勝利で飾った。同リーグのそのほかの試合ではバルサが1-2で敗れるなど波乱も起きた。優勝を懸けた厳しい戦いが始まったのだ。
 試合後、エスパニョールのロベルト監督は、「勝ち点3を取れたことが何よりも大きい。これからチームはどんどん改善点は修正していくし、選手たちは練習したことを試合で体現してくれるので、しっかりとトレーニングすればどんどん良くなっていくのは間違いない」と力強く話した。リーグの初陣の白星発進は重要。彼は、その重みを口にし、今後はトレーニング次第だと選手への信頼を示していた。
 第2節の対戦相手は、早くも強豪バルサ。大一番に向け、週の半ばに行われたトレーニングメニューを今回は紹介したいと思います。
 試合前々日のメニューは次の通りだ。
①ウォーミングアップ
②2人組パス
③11対8のポジション付きポゼッション
④1対0→2対1→3対2→4対3
⑤6対6+6人のフリーマン
 ③のトレーニング中(図参照)、興味深い場面があった。練習が始まると、安全圏のラインの外ばかりでボールが回り、ピッチの中央に効果的なパスが入っていなかった。すると、ロベルトは中央の選手にクサビのパスを出すように要求した。だが、守備が堅く、一向に改善されない。すると、ロベルトはプレーを止めてパスを引き出すための動きを指導した。その指示を聞き入れた選手たちは、徐々に意識的に中央を使うようになり、ボールが効果的に回るようになっていった。
 ロベルトが練習を止めてコーチングするたびに選手のプレーの質が変わっていく。一方で少しでも注意を背けると、また元に戻ってしまう。そうした高校生年代特有の若さも垣間見えたトレーニングだった。
 また④の練習では、インテンシティー(プレー強度)を高く、とにかくリズムを崩さずにどんどん次の攻撃へと展開を促す。そうすることで、緊張感のあるトレーニング内容となっていた。
 素早いカウンターアタックのような攻撃の中で、どこに数的有利を見つけるのかを意識させていた。プレーを止めることなく、休みなく指示がどんどん飛ぶ。スピーディーな展開の中、3対2では攻撃側がいかに2対1の局面に持ち込むのかを判断させる。選手たちもそれに感化されるように勢いよくプレーし、好プレーが出ると「Muy bien!(とてもいい!)」の声がグラウンドに響き渡った。
 そうした疾走感あふれる環境をつくり出すことによってシュートが外れると叫んで悔しがり、順番待ちのときにボールを蹴って鬱憤(うっぷん)を晴らす選手も表れた。こうしたグルーヴ感が、選手たちに一つひとつのプレーへの気迫や、こだわりを植え付ける効果を生み出しているのかもしれない。

page1 page2

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング