なでしこジャパンの新星候補・18歳FW宮澤ひなた、高校時代の恩師が語る覚醒の“原点”

星槎国際湘南高の柄澤監督【写真:西森彰】
星槎国際湘南高の柄澤監督【写真:西森彰】

指揮官が指摘「スピードだけではいずれ勝てなくなる」

 宮澤が注目を集めたのは、リトルなでしこ(U-17日本女子代表)で活躍した後に迎えた、高校2年冬の高校女子サッカー選手権だった。初戦で、星槎国際湘南と宮澤は、名門・日ノ本学園(兵庫)と対戦した。前半は宮澤の独壇場だった。その俊足でサイドを切り裂き、30分足らずで2得点1アシスト。だが、幾多の大会を制してきた日ノ本学園が底力を見せ、3点差を追いつかれた星槎国際湘南は、PK戦で散った。

 柄澤監督は、その時点で課題をいくつか指摘した。要約すると「試合の最後まで怖い選手になれていない」「スピードだけではいずれ勝てなくなる」ということだ。

 スプリントを何回も繰り出せるのは、宮澤の特徴だ。しかし、スタミナがあると言っても、程度問題がある。際限なく縦への全力疾走を続ければ、疲労が溜まり、その切れ味は鈍る。実際、前述した日ノ本学園戦もそうだった。前半こそ、相手をスピードでぶっちぎり、得点に結びつけたが、後半になると消える時間帯が増えた。宮澤本人も、時間を追ってパフォーマンスが低下するのを実感していた。

「どうしても縦に仕掛けすぎると、自分の脚にも疲労が溜まります。1、2年の時は、最後までもたなくて、脚がつって、スピードが落ちているのは、痛感していました」

 高校サッカーでは、敵も味方もキックオフからパワー全開で試合に入り、最終的にどこまで持つかという我慢比べになることが多い。高校サッカーでプレーしていた宮澤も、そのハイペースに巻き込まれていた。試合を通じて、バランスの良い力配分を会得し始めたのは、リトルなでしこに選ばれ、国際試合に出場できるようになった頃である。

「ゲームでこまめに水分を摂るということを意識して、日頃の練習でも、しっかりと水を摂るようにしてきました。(以前は長い距離を駆け上がっていたが)『距離が短いところで、自分の長所が生かせればいいかな』という考えになりました。前後半ともに怖い選手になれたかどうかは分かりませんが、どんな時にもチャンスに絡めるよう、意識してプレーできるようになりました」(宮澤)

 冒頭のシーンでの試合を通した駆け引きなどは、その賜物だろう。

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