世界的名手と「初速のスピード」 日本サッカーが追求すべき一歩目の速さ

日本人が目指すべき「体の使い方」は古武道にヒントがある?

 ブラジル人はよく「ジンガ」(ブラジル人特有のリズム)について語る。ジンガは様々な要素を含んでいる言葉だが、これもやはりパワーの問題ではなく、むしろ力の抜き具合が速さにつながるという考え方のようだ。ペレ、ロナウジーニョ、ネイマールの動き方はやはり何か腑に落ちないというか、不思議に思えることが多い。

 古武道はすでに介護現場にも応用されようとしているそうだ。人間を持ち上げたり、担ぎ上げたりする時に、より少ない力でそれが可能になるという。そもそも重いものを重いものとして持ち上げるのが西洋的な体の使い方だとすると(バーベルを持ち上げるなど)、かつての日本人は重いものをなるべく軽く持ち上げる方法を知っていたのではないか、という話を聞いたことがある。文明と引き換えに、便利な体の使い方の伝承が途切れてしまった。

 このコラムに結論らしい結論はない。ただ、サッカーでは非常に重要な初速に関して、何か体の使い方にヒントがあるのではないかという気がする。そして、その回答はひょっとしたら古武道の中にあるかもしれない。

 いずれにしてもサイズとパワーで勝負しにくい日本サッカーにとって、初速のアドバンテージを持つことはかなり重要だと思う。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



page1 page2

西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング