元ヴェルディ天才司令塔、なぜバルセロナでうどん職人に? 「食うために…」

なぜスペインでうどん? 「勝ちたいからさ、勝負は」

 そんなノリで一家6人での“民族大移動“を敢行した彼は、その後バルセロナを拠点にアパレルブランド「BUENAVISTA」、自ら観光ガイドを務める「VIVALAVIDA」といった事業を立ち上げる傍ら、抱いていた「金を稼げるイメージ」を具現化する手段として飲食業に目をつける。

「スペインやからこそ飲食やからね。もちろん需要が全くないから儲からへんけど、そのおかげでライバルが少ないっていうのではじめた。これがニューヨークやパリのビザが取れたり、日本で徳島行きますってなっても、飲食はやってなかったんちゃうかな。もっとうまいやつがいっぱいおんねんもん。勝てると思えへんからさ。勝ちたいからさ、勝負は」

 バルセロナでも日本食の人気は高いが、パリやロンドンと比べると日本人経営のまともな店は多くない。中でも麺類はスペイン人に人気な反面、専門店は数えるほどだ。その中でうどんを選んだ理由は、やはり単純明快だった。

「ラーメンって100種類ぐらいある。奥も深いやん。うどんってだいたいまあ進める道が一本やん。で、そんなに差ってないように感じるし」

 ラーメンは難しいけど、うどんなら作れそう。うどん職人が聞いたら怒りそうな見解ではあるが、実際のところ「宵宵祇園」のうどんには並々ならぬこだわりが見てとれる。いくつもの組み合わせを試した末、スペイン産小麦粉のブレンド製法を確立したオリジナルの極太讃岐うどん。化学調味料は一切使わず、昆布と煮干し、鰹節からしっかりだしを取った関西風つゆ。唐揚げ、いたわさ、ささみインゲンといった酒飲みの心をくすぐるサイドメニューの豊富さも含め、いずれも飲食業未経験者が作ったものとは思えないほど質が高く、美味しいのだ。

 

page1 page2 page3

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング