世界の潮流は「パスワーク+高速カウンター」 W杯で示した“日本らしさ”の必然と課題

ロシアでは、日本らしさをアピールできたがまだ課題が残る【写真:Getty Images】
ロシアでは、日本らしさをアピールできたがまだ課題が残る【写真:Getty Images】

強豪国が披露したカウンターを具現できる素材は発掘できていない

 こうして世界のトレンドを見れば、バヒド・ハリルホジッチ監督の試みは、まったく的外れだったわけではない。むしろ世界の中での日本の立ち位置を考えれば、堅守速攻は必然の流れとも言えた。だからそこに近づけるために、デュエルと縦への速い攻撃を徹底しようとした。相対的に日本の選手たちには、そこが不足していると考えたからだ。

 しかし同監督は、日本の選手たちが備える独特の資質には目が届かず、おそらく長所を活かした戦略を考案する余裕も時間もなかった。無いものねだりで世界の潮流に追従しようとするから、抜擢した選手の起用法も含めて、疑問符がつくケースが目立ち、時間の経過とともに停滞感は増した。

 だが今回、西野体制の成功で、日本の進むべき道が仄見えたとしても、同監督が語ったように「ベスト8まで8年間待つ必要がない」ほど明るい未来が開けたとも言い切れない。U-20以下には「ダイナミックなサッカーができる」(西野監督)逸材が揃っていると言うが、まだ誰も欧州のトップクラブでプレーしているわけではなく、ロシアで強豪国が披露したようなカウンターを具現できる素材も発掘できていない。

 確かにロシアでは、日本らしさをアピールできた。だが世界のトレンドを追いかけているだけでは、ここから先には進めない。日本サッカー協会が「オールジャパン」を強調するなら、狭い知己だけではなく、本当に世界の隅々まで目を凝らし、有能な人材、独自のアイデアを募るべきである。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)



page1 page2

加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング