「ハーフスペースの魔術師」香川真司 日本の“10番”が輝きを放つ主戦場とは?

[図1]ハーフスペースの位置【画像:Evolving Data】
[図1]ハーフスペースの位置【画像:Evolving Data】

香川が輝きを放つ「ハーフスペース」とは?

 ハーフスペースとは、ピッチを縦に5等分し、両端と中央のエリアを除いた場所のこと(図1参照)。この位置は4バックを敷く相手守備陣からすると、センターバック(CB)とサイドバック(SB)の隙間にあたる。ハーフスペースは、5つのエリアに対し最低でもそれぞれ一人ずつ攻撃側の選手がポジションを取っている際に効果的であり、香川は守備側が捕まえにくいとされる、この領域を有効活用する能力に長けている。

[図2]コロンビア戦の前半15分のシーン【画像:Evolving Data】
[図2]コロンビア戦の前半15分のシーン【画像:Evolving Data】

 コロンビア戦を振り返っても、このエリアを有効活用するシーンがいくつかあった。前半15分、右のハーフスペースでボールを受けた香川。この時点では左からMF乾貴士、FW大迫勇也、MF柴崎岳、香川、MF原口元気が各エリアに並ぶ状況だった(図2参照)。香川が前に仕掛ける姿勢を見せると、柴崎が中央から右のハーフスペースへと走り込んでくる。相手守備陣が柴崎をケアするような素振りを見せた瞬間、香川は一気に中央のエリアに侵入。相手がポジショニングに迷いを見せたところでボックス内に抜け出した乾へラストパスを供給し決定機を創出した。

 ハーフスペースの有効活用は、香川が1得点2アシストをマークした本大会直前のパラグアイ戦(4-2)でも垣間見えていた。後半6分に生まれた同点弾のシーンでは、ボールを持ち出したDF昌子源が中央の香川にパスを送ると、ワンタッチでハーフスペースに構えていた乾に渡す。フリーで前を向くことができた乾は、持ち味のドリブルで中に切り込みミドルを突き刺した。この局面では左から見て、高い位置を取っていたDF酒井高徳、乾、香川、FW岡崎慎司、武藤と5つのエリアに綺麗に横並びした状況が整っていた。

 ドルトムントで輝きを放つことができているのも、このエリアを最大限に活用する土台がチーム全体に浸透しているからだろう。ハーフスペースという“主戦場”で躍動する香川は、ロシアW杯本番を迎えてようやくドイツで「小さな魔法使い」と呼ばれる輝きを放ち始めた。日本代表にとっては、まだ偶然の産物かもしれない。だが自身二度目のW杯を戦う背番号10が、世界の強豪国を相手にチームの攻撃に連動性や創造性をもたらすのは間違いないだろう。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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