“成功のキーマン”に浮上 ボランチ大島僚太に託された攻撃の役割と芽生えた自覚

「サッカーにおいては積極的に声を出そうと思う」

「(相手の)プレッシャーは速いと思いますし、センターバックからの縦、縦のパスだと後ろが見えない状況にもなる。そういったところよりかは横からだったり、ひとつ飛ばして前向きでサポートするとか、そういった方がかっさらわれるシーンが少ないと思いますし、そこは全員で理解してやらないといけない」

 センターバックのDF吉田麻也(サウサンプトン)からは「基本的には、あまり落ちてこなくていい」と言われているという。「落ちずに、その分飛ばしてもらえるように、と思っています」。つまりボールを触ろうと下がっていくのではなく、できるだけ高い位置をキープしながら時には相手の前からのプレッシャーを吸収して周囲の選手を前向きにさせる。ボールを触ることだけがゲームメークではないと大島は理解しながら全体の攻撃を描いているわけだ。

 中盤での組み立てのベースは所属クラブの川崎で磨いてきたところではあるが、大島は「でも、Jリーグはあんまり真ん中でそこまで来なかったりするので、そこは受けにくいところかなって思う」と状況の違いを感じており、その部分は実はハリルホジッチ前監督からもよく指示されていたことだ。

 ただ西野監督になり、より周囲との細かいコミュニケーションが成否に直結するなかで、大島は組み立てを安定させ、時に攻撃のスイッチを入れる役割を担うビジョンを研ぎ澄ませている。だからこそ「サッカーにおいては積極的に声を出そうと思います」と語るように、これまで得意ではなかった声を出すというところも意識的にやっているのが練習からも見て取れる。

「ボランチはやっぱり大事ですよ。個人的にはボランチがチームを左右すると思っている」とDFリーダーの吉田も語るポジションで、重要性を増している大島がどこまで中盤から攻守のクオリティーを引き上げられるか。まずはプレッシャーの強いスイスを相手に存在価値が問われる。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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